バード・ウォッチングNO.57 ライフステージから暮らし方を考える

R2.1.21 理事 村瀬

年明け早々、ケーススタディに参加した。Aさんは50代、女性、愛の手帳4度、若いころ短期間だがお勤めをした経験もあり、大変だったとのこと。また持病を持ち、折々に心配を口にされる方である。

  • 暮らしにくさの背景を考える

 言語性があり、周りへの関心も高く、折々に仲間を批判的に見ることでトラブルとなり、調整の難しさを感じることも。振り返ると、Aさんも周りから求められることに応えきれないながらも努力してきた。でも今周りを見ると「こうしなさい」と求められてきたことをできていない仲間がいる。自分が言われてきたことを取り込んで、同じようにその仲間に言っているだけで、本人に悪気は全くない。人は育てられたように育つ姿である。
4度の分かる力やできる力がうまく使いこなせる状況ではなく、この力が穏やかな日常に直結していない。しかし「こうあるべき」と規範を示せば、「だって…」と反論を招く、「私は私たち」との気持ちを持つこと、周りの気持ちに気づけない生き辛さを抱えている姿といえる。

  • 気になる事柄の受け止め方は・・・

 仲間関係の生き辛さの背景要因を二次的な課題として位置付けたのだから、それを上塗りするような行動を問題視しての規制・修正する方針は取らない。
 児童期には、自己中心性をどう乗り越えるかが教育課題になる。これが過剰になると二次的な問題を生んでしまう、また理解という障害の壁も大きく立ちはだかる。ここは乗り越える課題というよりも、生き辛さと捉え、本人の困惑と受け止めてどう支援するかに力点が置かれる。
とはいえ、現実にはトラブルが間々生じることだから、いちいち指摘はせずに仲を取り持つ知恵を、気分転換、場の切り替えに発揮するように努力する。

  • 持ち味をどう位置付けるか

 一方で、持ち味として食事時の薬用のコップ配り、何人かのエプロン準備で発揮されている。また朝の体操や集まりなど挨拶リーダーや、お休みの方の代行や、盛り上げる合いの手をかけてくれたり、誕生会など折々の行事などでも折り紙でプレゼントを作ってくれたり・・・。こうした小さなことで十分なのだから仲間の役に立っている自分を感じられるように、そんな自分を嬉しく感じられるような展開を心がけていく。

  • ‟課題“の捉え方

 課題が独り歩きしないように、ライフステージとの関連で適切に把握するように、また課題と持ち味との絡みでとらえ直していかれるようにと議論された。持ち味をクローズアップすることで相対的に気になる事柄は影が薄くなる。これは知的障害支援の原則である。
さらに刺繍作業で針に糸が通しにくくなったとの言葉がしばしば聞かれるようになっている。50代にもなれば誰もが付き合う老眼、また肉親との別れもあり、少しずつ喪失の年齢に差し掛かり、服薬も多いことから加齢現象はこれから進むことを想定しながらでもある。この老化の波を受けながら手伝ってもらわざるを得ない自分を受け入れることになり、穏やかな仲間関係の追い風にしたい。50代になれば、まさにここに尽きる。

バード・ウォッチングNO.56 「クリスマス祝会 サンタの夕食めぐり」

R1.12.20 理事 村瀬

メリークリスマス!おめでとう!サンタさんがやってきました! 夕食のころ合いを見計らって各ユニットを訪問した。年中行事で、皆さんそろそろ感もあって和やかな時間となりました。

  • サンタさんとの出会い

 一ユニット5名の仲間、夕食のごちそうも大ぶりなクリスマスチキン2つ、シャキシャキ感のあるコールスローサラダ、スープ、ごはん。これらを目の前にして早速いただきますの方も。サンタさんからは飲み物のプレゼント、クリスマスカラーの赤と緑のキャップでシャンパンを模した炭酸系。どなたを一番にしたものか、と迷いながらもお一人ずつ握手をして手渡ししながら、皆さんも「赤」「こっち」とサッと選び、手に取っていく。苦手な方には配慮した飲み物があって一安心でした。
折角なのでお祝い写真を撮ることに。ソファに集まってと折り合えたユニット、ご飯を食べ始めたところでは写真よりごはんが当然、優先であり食席から動けない方も。ならば動ける方が寄り合うことで。普段の食事と違う動きが入り、多少戸惑われた方も、双方の折り合いがきっと和やかな一枚に収まっていることでしょう。

 5人ほどのユニット、緩やかなつながりのもと一つのテーブルを囲む食事、時に相性からの配慮が求められるが自ずと生まれる和やかさがある。いつもの顔ぶれ、いつもの時間、いつもの動き、収まりのいい場で収まりよく視野に入るリビングに安心感がある。
 比べてみれば、大きな集団にみられる雑多な刺激の多さ、通り抜けるような広さや自分の場から一部しか見えないおさまりの悪さ等々、広い場にはそれなりの課題と共に良さもあるはずだが、生活の場ではこの手ごろ感が大事になる。環境が生み出すもの、一日の締めくくりの時間でもあり部屋着のリラックスさも加わわって活気の中にもやはり日中とは違いゆるりとした雰囲気を感じる。
 食べっぷりの良い人、早い人、相変わらずなのだがそれでもこの場の印象は異なってくる。きっとご家族ならば家庭との違いも感じることなのでしょう。環境のもたらすものが大きいと言えます。

  • 思いは形になって

 誰もがいくつになっても楽しさはエネルギーの素だと実感しながら人生を歩んできたはず。いつの間にか、この仕事を自ら選び、目の前のお仲間たちを楽しませることを仕事の一部としている。いつもの暮らしは淡々とした過ごしを基本として、落ち着いたリズムを形づくる。その上で、月々の巡りに合わせてお楽しみが催される。こうした緩急や動静の組み合わせの中にリフレッシュの彩が反映され、生活の張りも、折り合う社会性も少しずつ確かなものへと定着させていくのでしょう。
 楽しくありたいとの思いが張りのある声に、Aさんも、Bさんもとの思いが個別の声掛けに、思いのぬくもりを伝えたいが握手やタッチに、思い出の1コマにできたらとの願いがそれぞれの写真に・・・。思いは形になるものですからもっと具体的な思いを描けたら、もっと素敵なクリスマスになるのでしょう。先輩から〝それには相手への関心が肝”であるとアドバイスをいただいた。

バード・ウォッチングN0.55 「伝えられなかった気持ち」

 R1.12.2 生活支援員 樽見理沙

 日々の出会いは、私にとっても本人にとっても思わぬ展開をするもの。ときに“どうしょう…”とその場の対処に気を取られてしまうことも。そんな折、失礼をしてしまったエピソードです。

 作業を終え、昼食の用意が出来るまでの間に新聞を読もうと2Fに降りたAさんと、自席でくつろいでいたBさんとで、トラブルがありました。

  • 「嫌われちゃった」

Aさんは、新聞を読みながら、いつもの癖で、テーブルを叩いて大きな音を立ててしまったようでした。その音に驚いたBさん、
「うわ~~~っ!!」
と、耳をふさぎ、大きな声を出して不安な気持ちを表現されました。当のAさんはBさんの大きな声に驚き、顔をこわばらせてBさんを見つめていました。すぐにAさんをさりげなく3Fに誘導し、お二人に距離を置いていただきました。落ち着けるようにとソファーにお連れすると、Aさんはとても悲しそうな顔で職員を見つめ、「Bさんに嫌われちゃった!」と。
胸が痛くなるような声と表情でした。‟Bさんを驚かせるつもりはぜんぜんなかったんだ、でも驚かせてしまった、嫌われちゃった、嫌わないで、どうしよう、ごめんね。”たくさんの気持ちが、その一言に込められているのが伝わってきました。「大丈夫だよ」と慰めつつ、とりあえずソファーでゆっくりしていただき、その場は収まりました。

  • 私の思い

私は、Aさんの気持ちをBさんにお伝えしたいと思ったのですが、すぐに伝えても、Bさんも今は気持ちが高ぶっているだろうし、タイミングを見計らってお伝えするのがいいかな…と思い、すぐにはお伝えしないことにしました。
少し時間をおいてBさんにお話ししよう、そう思っていたのに、ついうっかり忘れてしまい、結局私は「Aさんは、驚かせてしまったことをとても申し訳なく思っていらっしゃいました」ということをBさんにお伝えしないままでした。
 その後、二人の間にわだかまりが残った様子は無く、この出来事が尾を引くことはありませんでしたが、Aさんのお気持ちを、私はちゃんとBさんにお伝えしなければならなかった、と思います。もしかしたら、Bさんの方にもAさんにお伝えしたいことがあったかもしれません。

  • 私の仕事として

自分の気持ちを人にうまく伝えることは誰にとっても難しいことですが、それがより不得意で、お手伝いを必要としている方が利用者さんの中には多くいらっしゃるように思いますAさんのあの一言に込められていたたくさんの気持ち、ご本人からBさんにうまく伝えられなかった気持ちを感じたのだから、それを伝えるお手伝いをすることは、私がしっかりとするべき仕事だった、と反省しています。

バード・ウォッチングNO.54 「私の受け止め方」

R1.11.26 主任 土屋紗織

エピソードは生身の1回限りのものですから、下手をすると通り過ぎてしまいます。また思いがけない展開の一コマですから、普段使いの思いの中に“何が言いたいのだろ?”との関心を持っていることで私の心に留まるものがあるようです。

「そばにいることで」

  • 本当の気持ちは??

 日中活動では控え目で、発言も少ないAさん。心の面で何か抱えている時は態度にとても表れます。何かを求めてくるようにチラっとこちら見てきたり、今度はジーっと見つめてきたりと。何かあるのかと思い話しかけると、フンっとそっぽを向くのです。アメとムチではないですがこちらとしては、エー!と心の中で叫んでいます。

  • なにかは分からないけど、感じるから

何かあるけれどそれをどんな風に伝えたらよいのか難しいのでは?だけど気付いてほしい、さびしい気持ちを伝えたい、そんな風に感じられるのです。そんな時、そっとそばにいる。一緒に折り紙をする。塗り絵をしていたら、色鉛筆を削ってあげる。些細な事ですがAさんのこと見ているよというメッセージを送っています。その後、少し時間をおいて様子をみるとニコニコしているのです。お話することも大事なアプローチですが、ただそばにいるという事だけでも“あなたが大事”を注ぐきっかけになることをAさんを通して感じました。


 Bさんの自己紹介の場面に何度か立ち会っていますが、今回は思いもかけない心情が湧きおこりました。Bさんがこのような自己紹介するのは、両親への想いやお兄さんへの思い出が蘇ってくるからかもしれない、肉親の情がこの自己紹介を生み出しているのだ、と感じたところでした。このように受け止めるとBさんの淋しさと共に家族の思い出の強さも感じずにはいられませんでした。

「私の伝えたいこと」

  • いつもの自己紹介だけど

 実習の方を受け入れる際に、みんなで自己紹介タイムを設けています。そこでBさんの番がくると、「B千登勢といいます。千に登る勢いと書いて千登勢といいます。よろしくお願いします。」と必ず決まりごとのように話されています。実習の方からの良い名前ですねの言葉に満面の笑みで答えられています。そしてもう一つ「兄弟はいますか?私には亡くなってしまったけど兄がいます」と。

  • 両親の思い出に支えられているから

 ご両親がつけてくれた名前やお兄様のことを話されるBさん。淡々と話されているようですが、私にはなんだか寂しい気持ちを抱えているBさんを感じてしまうのです。ご家族を亡くした寂しさを抱えているけど、素敵な名前をつけてくれたご両親やお兄様との良い思い出は心の中にずっと生き続けている、私の支えになっているんだと、この自己紹介で伝えたいのかなと思います。これからBさんの支えの一部になれるよう、いつでもBさんの事を見守っていますね。

バード・ウォッチングNO.53 「バザーを通じて感じたこと」

R1.11.4 理事 村瀬

 《21°、晴れ間が広がる》との予想、天の応援の下に秋空のバザー、開催だ。
朝のひとひねり-秋晴れに誘いさそわれてバザーかな/さそわれてオレも行くかとサイフ持つ/青空にサイフゆるみお買いもの/買ったよ。おまけは?付いてくるのかな。

  • それぞれの出会いとして

 普段、折々の出会いはお母さんたちと、バザーにはお父さんたちの応援も結構得られる。職員も親御さんたちも名札をつけていただき、顔馴染みへのあいさつ、ちょっとした雑談、初顔合わせの新人職員は自己紹介のしやすさを生むきっかけづくりを演出している。私にとっても6人のお父さんと言葉を交わす時間をとることができた。間合いが取れず残念に思った方もいらしたが、次の機会にと心がけておきたい。

  • “一緒に”取り組むことから

 親の会、法人合同の実行委員会の下で進められる行事である。日ごろの母親ボラの手助けの下、法人がリサイクルショップを運営しているため、手慣れた商いの感じもするが、お祭りの彩を加えたバザーになっている。それにしても、お父さんたちの力と沢山のお母さんたちの総力戦で得難い行事になっている。
事前の準備、前日の下ごしらえ、当日朝一番の職員含めて男手でテント張り等の環境整備に始まり、手慣れた方から、さて、何から手をつけたら…の方まで、あっちこっちから飛んでくる声に応えて2時間、形が整ってきた。利用者出勤後は、一緒に売り子に立ったり、見学やら出し物やら掌握運営やら、ご家族、利用者、職員三者で持ち味を出し合いながらの一日であった。

  • 利用者のパフォーマンスもバザーの彩になって

 午後のお客様の足が落ち着くと利用者のパフォーマンスにご家族も特別出演、いつものお楽しみに特別な一味が加わって、一緒にやることの楽しさだ。細かな点で不首尾なことも有ったが、それ以上に和やかさが組み込まれることが大事なのだ。それが暮らしなのだと感じた。
 障害への特別ルールや身内や職員の子どもたちへの年齢配慮をしつつも、ゲームとして成り立つ枠組みは堅持することでシンプルなゲームの中にも共に暮らすベースが息づいていくのだろうと感じた。

  • 成績発表にとどまらず

 やっぱり気になること。小さなバザー、ほどほどの金額になり、うれしい事である。金額以上に“関係者が一体になって、一つ目標に向かって取り組むこと”の大事さを感じた。和やかな地域づくりに向けて感謝の一こまを演出できたことが何よりであった。ご家族にしても、職員にしてもなかなか思うに任せないことがあるのは当たり前のこと、隣り近所のことも、内々のことも互いに失礼をすることは人社会の常、でもこうした一緒の経験から互いの違いを違いとして感じ取り、また協力する土台が形づくられていくのだろうと思う。至らなさにお許しをいただきながら、チームを組んでゆこうと思えた秋晴れであった。

  • 片づけに入ると

 手元に残った商品は細々と袋に仕分けして歳末のリサイクルショップに、お母さんたちの大仕事だ。大物は車に積んで、またチームを組んで手運びで、男性の仕事だ。軽いものは手待ちの方々で事業所に片づけて…。暮れる前に片付けが済んでホッとする疲れである。最後に見渡すと、お借りしたスペースが前よりすがすがしくなっていた。お母さんたちの心遣いだ。事業所から50mほどのこの地は街づくりに伴う換地とのこと、今しばらくお借りできることを祈りながらである。

  • 振り返り、これからを思う

 かつて活動を担ってくださった方が応援に顔を見せて下さった。親の会30年、法人15年の歴史は世代交代の波が押し寄せている。先輩筋が頑張ってくださっている姿に加えて、若いご家族の力も見られる。親の力、大人の力、社会の波をかぶりながらも、踏ん張る土壌がある親の会の力を確信している。

バード・ウォッチングNo.52 「GH単位の休日プログラム」

R1.10.28 所長 井上

10月22日(火)は天皇陛下即位の礼と言うことで今年限りの国民の休日になりました。飛び石の休日なので在寮の利用者が多くいる状況。天気が良ければ片倉つどいの森公園に行く企画でしたが、あいにくの天気でイオンモールでの昼食会となりました。GHの休日の過ごしが課題になっているところでの試みです。12名の利用者と5名の職員で出かけてきました。

  • インフォメーションすることで膨らむ期待感

 1週間ほど前に休日の過ごしを考えていることを一部のメンバーにはお伝えすることができました。日中活動の過ごしとは少し違うように感じているのか、いつもなら否定的な意見を言うメンバーも表情が緩みます。良い天気ならコンビニでご飯を買い、公園で散歩とシャボン玉をすることを伝えると「うんうん」と頷いていました。
天気が悪くなるとの予報から三日前にイオンモールでの昼食会に変更する旨を伝えました。その際に気をつけたのがどんなお店があるかをお伝えすること。何が食べたいか聞いてみると、「お肉!」や「スパゲティー!」と好物をはっきりアピールする一方で「見ないとわからない。」という方も。その時食べたいものをその場で見て決めるというのです。納得です。でも帰り際に「甘いものはたべたいな。」と。お伝えした店の中にクレープ屋さんが入っているという情報は彼女の琴線に触れたようでした。

  • ひと呼吸の大事さ

 雨の日はどの人も考えるのは同じなのでしょうか、駐車場は激烈に混んでいて、たまたま空いたスペースに駐車。また、フードコートの席もぎりぎりで確保できました。分かれた席になってしまうと掌握がしづらくなってしまうので気になりました。席に着き安心して座ろうとすると別法人の日中活動を利用しているメンバーが立ち上がり、おもむろにフードコートの外に歩き始めました。日中活動が別法人で外出中の姿に触れていないため、職員はあらあらと思いながらどこに行くのか様子を見て後に付いていきましたが、トイレへ一直線。言葉での意思伝達が上手にできない方なので改めて「そうだったのか」と了解でき、本人も戻って来てすっきり。アツアツのラーメンを注文して、おいしそうにニコニコと召し上がっていました。
だいぶ騒がしい状況だったからでしょうか、またはご自分の次の動きのつもりがあったからでしょうか、食後は少しするとやはり立ち上がり、歩き始めました。待っていただいて他のメンバーと戻ることも一瞬考えましたが、気分の良さを優先して、あえて留めず、一人の職員と駐車している車に早々に引き上げました。歩き始めてしまったときは“今度は?”と思いつつも、ひと呼吸置き様子を見ることの大事さが良く分かりました。

  • 気持ちよい疲れは次の日の活力

 食後、時間があるのでドライブをする運びになりました。車は2台だったので、別々のルートに。私のルートは多摩動物園の横を通って中央大学を通り過ぎGHへ。30分の道のりをゆっくりドライブします。もう一方は、途中で雨が止んだのでシャボン玉を取りに職員の自宅へ。中央公園でひとしきり遊んでから帰寮しました。帰ってから“少し疲れた”と業務日誌にありましたが、暇疲れの様なストレスの疲れではないので心地よい疲れだろうと思いました。また、翌日、メンバーにお会いすると「美味しかったね」「良かったね」と言う嬉しい言葉や、「職員がご馳走してくれるものとばかり思った」と言う言葉も飛び出して、皆さんと豊かな出会いを重ねてきている印象も残りました。ともかく、休日の過ごしに少しですが、潤いがあったのは何よりです。次は是非、晴れた公園を優雅に散歩といきたいところです。

バード・ウォッチングNO51 「感情的な関わりからの立ち直り」

R1.10.8 理事 村瀬

  • 避難所から安心の基地を目指して

 この1年半、活動の合間に私のところで過ごすことが多い青年がいる。狭い事業所のため休息や逃げ場がなく…、私の部屋が避難所として機能してきた。そして、この1年は、避難所の安心感から、さらにエネルギーを溜めて主体的に一歩踏み出る安心の基地への格上げを意図してきたところだ。

  • 天邪鬼的な言動に振り回されて

 避難所の安心感から天邪鬼的な言動が広がりつつあり、試行錯誤してきた。特に個別的に接することの多い食事への移動で誘発する傾向にある。食事⇒歯磨き⇒散歩⇒午後日課の展開となるのだが・・・。午前活動から戻り、少しの間合い共に過ごし、さて食事へと誘う。食事の確認をして一緒に部屋を出るとすぐに「後で食べようかな」と、受け入れている安心感を前提に「試し」が出ているように感じる。また「いらない、食べない」と、天邪鬼的な言動が多くなる。これはもっと分かって欲しい願望が背景にあると考えている。だから本人は「次は何か」よく分かっているし、「本心ではない」のだが、こんな言葉が繰り返されてしまう。

  • 繰り返されることで感情的になる

 この道45年、70才を超えても不徳の致すところで、心情が揺れ動き感情に支配されてしまう。〈いい加減にしてよ〉と苛立ちに近い感情が呼び出されてしまう。意地悪的な対応に陥る。たとえば、言葉尻で対応してしまい、「後で食べる」に“先きに食べるね”と。「嫌い、食べない」に“食べなくてもいいよ”といわば“見捨てる”対応で追い詰めてしまった。良い循環にならないに気づきながら感情に支配されるお粗末さであった。

  • ダメな自分を感じながら原則を確認し立ち直る

 今テーマにしていることは何か、「何のため」の個別の関わりか、これでは思うようにいかない、と分かりながら切り替えははかどらない。理性と感情にせめぎ合いが起きているのだろうと思いつつ、自分の面倒くさい面を〈困ったことだ〉と感じながらの時間経過でもあった。ともかく「安心の基地への格上げ」が狙いどころ、また、今「ある」姿を認めることで、次の姿に「なる」エネルギーが生まれる、との支援の原則「ある」から「なる」へを自らに言い聞かせていた。
 “試し”も“願望”も対人関係的に目的があり、現在は不適切な行動で目的を達せしようとしている。この不適切さが私の感情を逆なでするように関係がぎこちなくなっている。こうした受けとめ方に立つことで適切な行動に着目して、「ありがとう」「いいね」「できました」「賛成」「一緒に」等のプラスの言葉かけを多くして彼の存在をしっかり受け止めることができるはずだ、と肝に銘じた。
 自己正当化しないこと、「何のため」の仕事かに立ち返ること、遠回りになってしまったが、この自己葛藤が自らを高める原点と承知して取り組んでいこう。