バードウォチング NO64 コロナ禍に思うー生活支援の仕事を考える

 

R2.6.1

理事 村瀬

1、エッセンシャルワーカーといわれても

 「エッセンシャルワーカー」-私たちの知的障害者の生活支援職もこの括りに入るとのこと。なんだか、こんな時になって、いきなり社会的な評価を押し付けられた感もする。今までは「大変な仕事ですね」といった社会の傍系の仕事的な見られ方を感じたものであるが・・・。

2、不安の中で・・・

 3月、名古屋・高齢者施設でクラスターが発生、市からの休業要請。そして千葉・知的障害者施設の100名からの集団発生。続いて、緊急事態宣言の流れの中で、私どものような地域の小さな事業所では、職員の感染する、感染させる不安が広がっていました。運営会議、職員会等を経て、障害福祉の生活支援の仕事は、感染防止と障害者の生活維持との両立を成り立たせることにあるとの方針に立ちました。

 緊急事態であり、今までと同じ対応ではこの両立課題はなしえない。できる配慮としての密閉、密集対策は具体策を示し、50%の利用制限と室内・室外プログラムの整理、朝夕1時間の短縮のご協力を利用者・ご家族にお願いした。この仕事の特性から密接の領域は難しく注意することに留まったが、できることに注力することにした。不安を感じる職員は、その気持ちを尊重し、休業も由とすること、落ち着いたらまた一緒にやろう、とスタートした。お休みされる職員もいらしたが、利用を50%に制限したことで職員のやり繰りは間に合った。

3、現実の経過の中で

 この一カ月余、利用者やご家族の発熱等3度、肝を冷やす事態になったが、一過性のカゼでPCR検査に至らず、安堵した。一人発症したら全員濃厚接触の現場であり、苦しい日々であった。そんな最中に、エッセンシャルワーカーと称され、面はゆい感じの言われ方をされて戸惑った。医療従事者はまさにエッセンシャルな立場で社会的な評価は当然のこと。この間、忙しく働いている業種は、生活に欠かせないものとして一緒くたに…。

 私たちは、順次お休みの協力をいただいている方々に一日2度、様子伺いのお電話をさせていただいた。ご家族から、助かった、次の利用日まで頑張る等、何とかやり繰りされている姿が伝わってきた。時に、イレギュラーが苦手な方は分からないままに我慢し食事がとれない・・・、生活リズムが崩れてきて・・・、食べているか飛び跳ねているか・・・、孤独です・・・等、日が経つにつれ感謝の言葉と苦しい胸の内がない交ぜになって、実際の日々がここにあると感じた。それでも、感染防止と生活の維持の方策に皆さんの協力を得て乗り越えてきたところー何とか法人とご家族との連携がつながってきた。

4、エッセンシャルワークのプライドを持って

 ご家族、ご本人の頑張りに触れるにつけ、この仕事の大事さに改めて気づく機会となった。利用者の生活を支えている自負、この生活支援の仕事は、不要ではなく、支えられて今日の暮らしがあるのだから不急でもない。また、福祉の仕事は、公金で運営されている点からは、社会の委託を受けて成り立つ仕事である。さらに、ご家族からも、自分たちの生活と共に障害を持つ我が子の育てはやり切れない現実から、親の委託を受けての仕事でもある。「私にはできなかったが、あなたに委託したい」ということなのだ。「委託」の中に暮らしやすい社会への貢献を期待されていることをエッセンシャルワークとしてプライドを持って受け入れられる気持ちになってきた。さぁ、今日も楽しくやろう。

バードウォチングNo63 新型コロナで利用制限中だからこそ 和やかな、新たな試みのエピソードが生まれました

R2.5.1 樽見 理沙 土屋 紗織

 

*気遣いが素直に出せる、気遣いをしたくなる、そんな関係なのでしょう。そこに含まれている彼のメッセージ、こんな風に受け止めてくれる人がいる中で日々が成り立っているのです。一安心です。

 

 担当が変わって打ち解け始めたころのこと、Aさんとの間で、嬉しいことがありました。15時までの勤務の私は、おやつタイムが始まるのと同時くらいに帰ることが多いのですが、その日はちょっとだけ遅くまで残っていて、皆さんがおやつ召し上がっている中、片付けものをしていました。さて帰ろう、と思ってAさんの席の後ろを通ると、Aさんが席を立って、私におせんべいをひとつ、差し出してくださいました。

「食べていいんですか??」

びっくりして聞くと、Aさんは口を開けるように無言で促してきました。私が口を開けると、まるで親鳥がヒナにごはんをあげるかのようにポイッとおせんべいを入れ、何事もなかったかのようにクールな表情でまた席につき、おやつの続きを召し上がっていました。

「お疲れ。たまにはおやつ食べていけば?」

そんなお気持ちでおやつをわけてくださったのだと思います。気だてが良いというかなんというか!私は思わずキュンとしてしまいました。あのときの「ばかうけごま揚しょうゆ味」、最高においしかったです。ごちそう様でした!(樽見

  

*送迎車内の密集リスクを下げる工夫として、GHからの歩き登所を試行しています。こんな時だからこそ、かねてからの運動量に配慮して暮らし方を健康志向に変えることにしてみました。

 

  • 「えっ?歩き?」

 緊急事態宣言が出てから一日の利用人数を減らすため、GH系の利用者と在宅系の利用者に分けることになりました。この機会に、ケアホーム利用の方は徒歩での登所を試すこととなりました。

朝のお迎えは職員3人で男性棟にお迎えに、一番最初に出てきたのはBさんでした。通常であれば、あおいとりの車両でのお迎えですが、職員だけしかいないという状況に、Bさんはドッキリにでもあったかのような表情で右に左に顔を動かして車両を探したり、普段クールなBさんからは想像もつかない「どうなっているの?」とドギマギした様子に彼の知らなかった一面をみたような気持になりました。

20分弱ですが、Bさんにとって歩いての登所はとっても良い運動になったかと思います。しかし道路を走る車や電車が苦手なことは承知していましたが、やはり緊張した表情で歩いていました。この地で暮らしていくのですから、いつかは乗り越えていかなければと思います。そこをどうアプローチしていくか、コースに馴染むこと、電車の線路位置を知ること、散歩エリアを広げていく心づもりでいます。(土屋)

 

バード・ウォッチングNO.62 日々のエピソードから

R2.4.8 GH青い鳥 所長 井上

 直近のエピソードを紹介します。私たちは現場で日々の生活に直接触れ合います。いろいろ自らの支援のあり方や日々の下地を考える機会となっていることを感じました。

  •  「寂しかったんだよ!」

「なんでだよ!」とでも言いたいのでしょう、その日のAさんの様子はイライラが募り、私が『さくら』にお邪魔していることすら面白くないという感じでした。その日の連絡会で日中担当の職員がお休みになっていたことが頭をよぎりました。「〇〇さんがいなくてびっくりしたね。また明日来るよ。」と。そんなことを口にしたところ気持ちに届く一瞬があったのですが、またイライラ状態になりました。

 職員も人ですからお休みもあるでしょう。ですが、理屈はそうであってもそのことを理解するのは難しい、Aさんにとっては「なんだかよくわからない、なんでいないんだ」と感じる訳です。おそらく日中職員は前日の帰り頃に休みであること、代行の職員が来ますと話しているはずです。そして、当日は代行の職員や上田にいる職員と過ごしていましたが…。

彼は、自分の立場で快・不快の感性で周りの状況をとらえる認識の仕方ですから、あれこれ言われても了解するのは難しいのでしょう。感性的な存在なのですから、職員が気持ちを汲んであげることはできるはずです。「いなくて寂しかったね、ごめんね。怒っちゃうよね。」と感性に働きかける言葉かけが受け止めやすいのでしょう。「お休みは仕方ないでしょ。」と怒っていることを諫めてどうにかしようとすれば、それは彼の理解できないことを衝いてしまうことになり、立つ瀬が無くなります。私とのやり取りで一瞬ですがハッとしてくれたことにほんの少しですが彼の気持ちを代弁できただろうと手ごたえを感じつつ、やはりここが大事だと感じました。感情の凸凹があるのは普通のこと。状況に合わせながらなんとか受け止め慰めながらやり過ごしていくことで少しずつ支えられる関係になってゆくのだろうと思っています。

  • 「自信あります!」

 令和2年度の入所式になるはずだった4月3日は、主役である新人の体調不良で延期に。コロナの関係で予定が狂いに狂ったのでメンバーも少々元気がない。そこで急遽お楽しみ会になりました。

最初は景気の良い職員が大いに盛り上げ、4つ目くらいの出し物に『ひげダンスのテーマ』をバックにおもちゃの刀に向けて輪投げの輪を投げるパフォーマンスをしました。職員がデモンストレーションを数回やった後、メンバーに「やりたい人?」と誘いました。普段なら勢い良くCさんが声を出し手を挙げ、Dさんが『いざ!』という感じで手を挙げますが…。

ところが、今回はBさんが笑顔で自信ありげに手を挙げ、前に乗り出してくるではないですか。普段は耳に手を当て喧騒を少し避けるようにしているので、どちらかというと苦手なイベントと思っていたのですが耳慣れしてイメージが出来上がっていたのでしょう、タイミング良く声をかけられると皆からのBさんコールで気持ちも乗った風で『自分は得意!できるよ!』と言わんばかりです。きれいに弧を描いて輪投げが成功し、メンバーからは拍手喝采。誇らしげに席に戻っていきました。

 体験的に獲得していく方たちです。すぐにとはいきませんが繰り返し繰り返し、しかも楽しさの中、ここ何年かで仲間と一緒にイベントを経てきて、馴染み、楽しく参加できるようになり自信になってきたのだと思います。時間をかけ、探りながら巻き込みながら関わってきたことの下地が表に出た気がしました。次回も『ひげダンスのテーマ』を定番として“待ってました!”の期待感の場を設けたいと思います。

 

日々の出会い、一日一日の出来事は他愛もないことの連続ですが、意図した出会いがいつの間にか意味を持つ関わりになっていたことを感じさせてくれます。

バード・ウォッチングNO.61 いろいろなエピソードが生まれています

R2.4.1 主任 土屋沙織

  • エピソードから障害を理解する

 エピソードは、利用者の暮らしのチョッとした出来事を、利用者の心情の流れや仲間関係などを下地にして“こんなことがあった”と具体的なやり取りに焦点を当てた記録です。結果だけの行動記録では関係の深まりには繋がりにくく、この具体的な記録の中に、利用者の想いに気付くきっかけが生まれ、こちらの関わりも広がっていきます。

  • エピソードの意味

 本人にとっては、周りからどのように見られているか、肯定的にみられることで自己肯定感が育まれる土壌になります。家族にとっては、わが子の歩みを残すことになります。職員の見方を介して見直す機会となり、自らの接し方、受け止め方等へのヒントを得る心づもりで目を通していただいています。支援者にとっては、自分の関わりを振り返り考える機会としています。利用者がどんな生き辛さを抱えているか、どんな可能性、持ち味を持っているのか把握し、解釈する手立てになっている野です。さらに、第三者に託すことで、ご縁が持てた方にお読みいただくことがあります。青い鳥の実践について、社会的評価を受けるつもりでお伝えしています。日々の出会い、目の付け所、大事にしていること、将来の描き、考え方など、外の目に耐えられるものになっているか内省する機会としています。

  • エピソードSさん 「元気の源だから」

 月曜日はパン工房での店番をしているSさん。「今日はお客さんが○人来たよ」「今日は一人だけ」と一喜一憂され報告してくれます。書初めで『お客さんが来ますように』と書くほど、工房でのお仕事はSさんにとって張り合いになっています。

 そんなある月曜日、朝の会が終了後、冴えない表情をしていました。先週からの腕の痛みは良くなっているようでしたが、パン工房のお仕事をどうするか躊躇していました。体調がすぐれないのであれば工房のお仕事をお休みすることをすすめましたが、その話にも冴えない表情でした。きっと仕事をしたい気持ちがあるけれど、あと一歩気持ちが向かないそんな様子でした。

「Sさん、今日は無理をしないでできることをしたら良いですよ。」「お客様が来たら挨拶をするだけでも工房でのお仕事ですよ」と伝えると、思い切りが付いたようで「やる!」と元気に答えてくれました。少し心配でしたが、終えられて戻ってくると「お客さん、三人来たよ!」と晴れやかな声が聞かれました。

年齢や持病やらバックグラウンドの整えを一番に考え、その上でお客さんとの関わりができたらと思うところです。ともあれ生活の張りを持っていることの強みです。無理せず、今のペースを大事にしてゆきましょうね。

  • 家族会に40本のエピソードがまとめられました

 こんな出会いがあった、こんなやり取りができた、こうしたエピソードから相手をよりよく知り、楽しさを、芽生えを、好意的な持ち味や人柄を、また生き辛さの新たな解釈につながる気づきもありました。この気づきを楽しみに見守ることで、その人を支える根っことなっていくのでしょう。

 エピソードの土壌には実践の視点が大事になってきます。青い鳥では“あいうえおの実践”をし、本人の気持ちを大事にすることが本人の主体性を尊重することにつながると考えています。

 ・あ-あいさつ 気持ちの良い出会いと別れ、次の出会いに繋がる

 ・い-いたわり 失敗など上手くいかなくても気持ちを支える

 ・う-うなずき 関心をもっている、どんなことでも受け止める

 ・え-えがお  共に喜ぶ、楽しむ、安心感を与える

 ・お-おうえん 一緒に取り組む、元気になる雰囲気など勇気づける

 相手を支える根っことしての「あいうえお」の実践は、心を「軽く」してあげることにつながるのだと感じています。常識的なことですが、すぐにでも支援に取り入れることができます。障害の方と出会う場で、是非、活用して頂ければと思います。

バード・ウォッチングNO.60 ホワイトデーイベント ―贈る嬉しさ・貰う嬉しさ―

グループホーム青い鳥 所長 井上

  • おいしいラスクができました

バレンタインのお返しに今度は男性からの贈り物です。GH利用者は週末帰宅で13日(金)夕方にご自宅に帰ることを楽しみにしています。そこで、早めのホワイトデーの催しになりました。帰寮してほどなく16時半ごろ男性棟にお邪魔すると、包みの中に手作りラスクを入れ始めていたAさんがいました。メッセージカードに大きく「○○」と苗字を書きました。ちょっと型崩れした字形が「作ったよって、伝わるんじゃない!?」そんな職員の言葉に口元がほころびます。Bさんに至ってはラスクに不備がないかと一つ味見まで。贈る側に失礼が無いよう細心の味見です。“おいしい”とパクパク食べてしまうのではないのです。味見の形があって一つこんな気楽さが暮らしの中にあっていいなと感じる一コマでした。

 

  • Dさんにプレゼントする

普段DVDを自室で見ているCさんもそんなやり取りを見ており、お誘いすると手伝ってくれました。17時を過ぎ、女性棟のメンバーへプレゼントに行きます。行く直前、なんとなくためらったCさんも「Dさんにあげるんだよねぇ」で相手が確認されると表情まで柔らくなり靴を履き始めました。玄関口でDさんに遭遇するとニコニコが止まりません。照れながらプレゼントを差し出し、受け取ってもらいました。

 

  • Eさんのプレゼントだから…

 後半はEさんらがもう一方の女性棟にお邪魔しました。代表で貰ったFさんは口にはしないもののお気に入りのEさんからプレゼントされ照れてうつむき加減。他のメンバーも嬉しそうに体を揺らしていました。戻ろうかというところで携帯電話が鳴り聞いてみると、お風呂に入っていて渡してもらえなかったとGさんが残念がっているとのこと。それは失礼でしたということで戻ってお菓子を手渡しすることができました。Gさんからは「ありがとう」と笑顔でのお返事でした。

 

  • 家に持って帰る

 時間的にも規模的にも大きいイベントではありませんが、ただお菓子を作ったり、ただ渡したりするのではなく、その先に仲間がいることを意識できるような働きかけをしていきながら気持ちの交換ができることを大事に思っています。Gさんはいただいたお菓子をつぶれないよう大事に大事に家に持って帰ったそうです。

バード・ウォッチングNO.59 グループホーム企画プロ “お弁当を買って春のドライブ”

グループホーム青い鳥 所長 井上

今回の活動は飛び石連休で、日中活動事業所のお休みをフォローする意図で外出プログラムを設定しました。令和2年度は3回そのような機会がありますが、親亡き後の休日の過ごしを考える上で、今後に向けての良い実績になったプログラムでした。利用者14名、職員7名の参加者も勇気づけられる人数でした。

  • 和やかなスタート

 富士山が見通せる風のない外出日和になりました。事前に打ち合わせていた通り、コンビニで思い思いのお昼御飯とドリンクを購入します。商品棚の前で何を買うかあれこれと悩むのも外出のお楽しみの一つでしょうか。お金をレジで渡しお釣りをもらいます。忘れてはいけないレシートもしっかりいただいて、職員に渡してくれました。片倉つどいの森公園まで20分くらいのドライブです。いつもの送迎車内とは違いドライブ気分がおのずとにじみ出て、演出のCDもラジオも重なり和やかなスタートです。

  •  春の開放感に浸って

 到着して公園に入るとかなりの賑わいでした。凧揚げをする人、BBQをする人、テントを持ち込んでいる人…。そんな中、持ってきた敷物で自分たちの居場所を作ります。会のメンバーが到着するのに時間差があるので散歩をするグループとバドミントンをするグループに分かれ、一足先に春の空気を満喫しました。散歩に行ったメンバーの中に、前日「行きたくない!」と言って頑なになってしまった方がいましたが、「少し寒いけど気持ちいいね」と言いながら、体を動かし楽しさを表現していました。休日後の通院を気にされていたのか、はたまた別の事が気になり目の前のことの対処ができなくなったのかもしれません。到着後すぐ発散でき笑顔で過ごされ、気持ちの引っ掛かりが薄くなっていったことにこのプログラムの効果を感じました。

 

  • 嬉しい誤算に出会って

 今回参加したメンバーの中にはグループのプログラムに参加できるかどうかと考えていた方もいました。車の乗降の事、買い物での様子、公園内に入れるかどうかと予測して、グルーピングの際はマンツーマンシフトを組み、何かあればすぐに個別の動きに変更できる工夫をしていました。予測に反して、他のメンバーが買い物をしているコンビニでは皆と一緒にカツ丼とカルピスを選び、公園では車を降りて少し歩き、いろいろな刺激のある中で職員と共に御飯を完食できました。日々の関わりが実を結びご本人の刺激に対する対応力がアップしていたことを実感し、職員の『出来ないだろう』という思い込みを一蹴してくれた嬉しい誤算でした。

 

  • 春の風が芽生えさせたもの

 グループホームの職員は体制上一人で仕事をすることが多く、また、他のユニットとの交流が日中活動よりも少ないことが挙げられます。今回のようなプログラムを組むことで、普段関われないメンバーとの出会いを持て、自分以外の職員の対応を目の前にすることができ、自分の支援の振り返りや仲間の苦労まで知ることができました。休日の充実した過ごしだけでなく、そんな副産物も得ることができました。次は『親子プログラムに発展させようか!?』との発言も出て、職員の『試しにやってみたら』の土壌を耕すきっかけを生んでくれました。

バード・ウォッチングNO.58 生地の出会いだからこそ

R2.2.3 上田主任 初村啓義

Aさんの現況から、この仕事のやりがいに類することを折々にまとめる機会を得てきました。難しさと共に自分の至らなさを感じながら、障害を持つ彼に育てられている自分を改めて感じます。

  • 二人の穏やかな過ごし

 この日の午前中はAさんと二人での公園清掃、落ち葉掃きを手伝ってもらう。仲間の刺激がないこともあり、自分だけを見てもらえる安心感からぐずり的なアピールも少なく、補助的な押さえや、運んでもらったりの作業もよく取り組めました。お茶の時間の吐く癖も心なしか少ないように・・・。
 作業所へ戻り、いつもの仲間と合流しての昼食は危なっかしさを抱えながらですが、午前中の穏やかさが残っているようで強いイライラにならずに終えることが出来ました。

  • 悪い循環に差しかかってしまったが・・・

 午後は仲間を交えてポスティング。仲間の言葉に反応する形で作業中からイライラが見られました。帰りの車中、Aさんの怒りが爆発。同乗のBさんがいつも以上に多弁で、Aさんのいら立ちが募ってきていることが感じられました。なんとか場の切り替えを図ろうとするものの、私の思いがBさんには届かず、ヤキモキしておりました。
その場でBさんに今のAさんの状況を話せば分かってくれる方なのですが、その話はAさんの怒りを誘引するだろうと思い、躊躇しました。そうこうしているうちに「〇〇しちゃダメよ」とAさんのNGワードを口にしてしまい、心配が現実に。Bさんもさすがにここに至って複雑な表情で押し黙って・・・。運転しながらの「Aさんの嫌いな言葉なんだよ」にBさんも承知していて「つい言っちゃいました…」と。Aさん自身は大声を上げたことで「ノドが痛い」と訴えてきて、取りなしてもらいたい気持ちを出してきました。

  • 二人の気持ちをおもんばかりながらも、私まで・・・

 Aさんの怒れてしまう気持ちを察しながら、立ち直れるようにと試みている最中にも関わらず、私の中に《ちょっと勘弁してよ》と相反する気持ちが湧き上がっていました。Aさんに怒鳴られた後のBさんの表情を見て《別にBさんが悪い訳でもないのになぁ…》と思い、Aさんの方に憤りを感じている自分がいました。そんな思いから「大きな声を出したからノドが痛いんだね」「別にそんなに怒ることでもないのに…」と口が滑っていました。
 Aさんは少し考えるように動きが止まり、「フン、いいですよ。♯$%&*!?」と噛み合わなかった怒りをぶつけるかの様でした。その後は、私の表情を窺うように、いつもの「足痛い、初村さん」と関わりを求めてきます。私自身、すぐには気持ちが切り替えられず、作業所に着くまでAさんの方が私の機嫌を伺う感じでした。反省です。

  • 一緒に歩んでいる

 私は40代、キャリア10余年、主任の立場、自分のあるべき姿を省みながら努力しているが、うまくいったり、いかなかったり、失礼をしたり等の日々である。利用者の生地に飛び込んでいく関係だけに、こちらの度量も試される。支援の世界も「負けて覚える相撲かな」であり、利用者に稽古をつけてもらいながら地力を養っていくことなのだと感じています。
 それでも総じてみれば、AさんもBさんの出会いも凸凹しながらも、なんとか気持ちがつながって、「言い過ぎた」「いいえ、私こそ」と互いの気持ちを分かり合い、出直す感触になっている。ぶつかり稽古のような日々ですが支援の感覚を心技体で身に着けている時期とも受け止めています。