バードウオッチングNo.66 

R2/9/11
グループホーム青い鳥 所長 井上

「待っていますよ~」

 

 上田に用事があってお邪魔した時のことです。木曜日はパン販売の日。パンと焼き菓子で番重二つ分の商品が並びます。まだ商品が並ばないうちに地域の常連の方が買い物に来てくれました。販売の当番は河合さんのようです。あれこれ販売の準備をしているときにお客さんから「Aさ~ん、お盆(トレー)を待っていますよ~。頂戴ね~」と。常連さんなので勝手をご承知のようで、ゆったり動くAさんを待っていて下さいます。声を掛けられ照れ笑いをしつつ嬉しそうにトレーを渡すことができ、お買い物をしていただけました。
 あまり売れる場所ではないのですが、地域の人は期待して下さり、しかもメンバーに会いに来てくれるようなお言葉をかけてくださいます。Aさんは、そんなお客さんの期待の声掛けで「私のお当番」との気持ちを引き出してもらい、一つひとつ常連さんのリードに導かれるようにして、笑顔で対応していました。パン販売を通して、地域の中に障害のある人が根付いている・受け入れられているという手応えを感じたやり取りでした。ご本人にとっては、“いつもの方が私のことを気にかけてくれて嬉しい”、“いつもの方にパンを買っていただいて嬉しい”、“気恥ずかしさを感じながらもいつもの人に応えられる自分が晴れがましい”、そんな社会参加の喜びを感じるやり取りなのでしょう。地域の人たちに支えられている彼女、また、彼女の存在と彼女とのやり取りがこの常連さんの潤いにもなっているのでしょう。人との出会いはいつも気持ちのやり取りにたって成り立つものだから、そんなことを感じました。

バードウオッチングNo.65

R2/8/20

グループホーム青い鳥 所長 井上


「青い鳥の夏休み」

 

 

例年は、日中活動の夏休み中、親亡き後のGHあんず利用者の過ごしとして旅行へ行っていましたが、今年度はコロナの影響もあって遠出をするわけにはいきません。休みの間、どこにも行かずGH内でのんびりだけでは過ごし切れず、外へ出て気分転換を図ることもGH生活の一部と考えています。旅行以外で手軽に楽しめることはないかと知恵を出し、8月12日に流しそうめん(8名参加)、8月14日にブルーベリー摘み(5名参加)を催しました。

 

8/12 流しそうめん

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〇そうめんと氷はご厚意の味

たいへん暑い中、節を抜いた竹を組んで手作りの樋を設置してくれたボランティアさん。加えてありがたいことに、ふわふわのかき氷を作ることができる器械も貸して下さいました。イチゴ、メロン、あんこ、練乳と思い思いのシロップをかけて、そうめんがスタートする前においしい氷を味見。皆さん大満足で涼を堪能することができました。

 

〇“麺”食いは誰?

樋のセッティングが終わると、手伝いは手慣れたもので、メンバーは箸・器・各薬味の入った皿・そうめん・つゆを運んでくれます。樋の傍らに並ぶと器、箸をお隣の仲間へ順番に渡し、好きな薬味を入れ流れてくるそうめんを待ちます。案外流れがあるので箸で取るのに苦労します。一番すくい取れた方は最も下流に陣取ったAさんかもしれません。集まってきたそうめんを優雅に取り美味しそうに召し上がっていました。

〇流し〇〇も楽しい

そうめん以外にもトマトやチーズやブルーベリーなど玉になっているものが流れてきましたが、ブルーベリーが箸からこぼれ落ちると大笑い、すかさずBさんが手でつまんでパクリ。甘酸っぱい味が口に広がり、思わずニンマリ。暑さを忘れ、よく食べ、よく笑ったプログラムでした。

 

8/14 ブルーベリー摘み

 

〇期待値は『暑さ<摘み採り』

 この日も暑く、外での活動は厳しいかなと少しひるみながらあんずへ迎えに行きました。10時前に到着すると「待ってました!」と言わんばかりの勢いであいさつに来てくれて、「おはようございます。」「今日も暑いですね。」「ブルーベリーでしょ⁉」「昼食は?」と。皆さんの期待感が高いことを知って元気が出てきました。朝食時、食欲がないと言って召し上がらなかったというCさんも、出る直前にトーストを召し上がり調子が上向いてきたことにほっとしました。

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〇お土産のためにまだまだ採ります

 摘み採り農園に到着。今年の出来は長雨のために実が落ちてしまうことが多かったとのこと。「でも奥の方はまだまだありますよ」と農園の方が教えてくれたので、バケツを手に持ち手前の木には目もくれず進みます。張りがあって大きな実が採り時で、木の奥の方に生えているのでグッと腕を伸ばし、背伸びして採っていました。30分後一休みのドリンクタイム。熱中症対策には必要な時間です。まだ採り足りない方はもう15分だけ取りに行っていました。暑さを忘れ夢中で採った結果は、あんずのみんなで食べるための大サイズの1パックと個人的にお土産にする小サイズの2パックを持ち帰りできました。帰宅するDさんはお父様にと嬉しそうにお会計をしていました。

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〇動けばおなかも減ります

 昼食は和食レストランとファミリーレストランに分かれての食事。「暑かったからこういうのがいいよね」とEさんとDさんは迷いなくハンバーグを注文していました。健康マニアのAさんは“らしさ”が出てライスを注文せずにサラダとハンバーグでした。朝食を遠慮したCさんも昼食では食欲が出て、うな丼を召し上がりプログラムを締めくくりました。

 

 プログラムの時間は準備などを含めると、流しそうめんが3時間、ブルーベリー摘みが3時間強でした。あまり長くないものですし、費用面もそれほど多く掛かっていません。どちらの内容も自分ですくったり採ったりする体験系で、とても達成感があり十分楽しめるプログラムであったと思います。生活に少し潤いが足され、リフレッシュできたことで夏休みが終わった後の日中活動への活力になったのではと感じています。親亡き後の人生、節目節目を和やかに過ごす生活の場を用意することが暮らしの豊かさと心得てゆきます。

バードウォチング NO64 コロナ禍に思うー生活支援の仕事を考える

 

R2.6.1

理事 村瀬

1、エッセンシャルワーカーといわれても

 「エッセンシャルワーカー」-私たちの知的障害者の生活支援職もこの括りに入るとのこと。なんだか、こんな時になって、いきなり社会的な評価を押し付けられた感もする。今までは「大変な仕事ですね」といった社会の傍系の仕事的な見られ方を感じたものであるが・・・。

2、不安の中で・・・

 3月、名古屋・高齢者施設でクラスターが発生、市からの休業要請。そして千葉・知的障害者施設の100名からの集団発生。続いて、緊急事態宣言の流れの中で、私どものような地域の小さな事業所では、職員の感染する、感染させる不安が広がっていました。運営会議、職員会等を経て、障害福祉の生活支援の仕事は、感染防止と障害者の生活維持との両立を成り立たせることにあるとの方針に立ちました。

 緊急事態であり、今までと同じ対応ではこの両立課題はなしえない。できる配慮としての密閉、密集対策は具体策を示し、50%の利用制限と室内・室外プログラムの整理、朝夕1時間の短縮のご協力を利用者・ご家族にお願いした。この仕事の特性から密接の領域は難しく注意することに留まったが、できることに注力することにした。不安を感じる職員は、その気持ちを尊重し、休業も由とすること、落ち着いたらまた一緒にやろう、とスタートした。お休みされる職員もいらしたが、利用を50%に制限したことで職員のやり繰りは間に合った。

3、現実の経過の中で

 この一カ月余、利用者やご家族の発熱等3度、肝を冷やす事態になったが、一過性のカゼでPCR検査に至らず、安堵した。一人発症したら全員濃厚接触の現場であり、苦しい日々であった。そんな最中に、エッセンシャルワーカーと称され、面はゆい感じの言われ方をされて戸惑った。医療従事者はまさにエッセンシャルな立場で社会的な評価は当然のこと。この間、忙しく働いている業種は、生活に欠かせないものとして一緒くたに…。

 私たちは、順次お休みの協力をいただいている方々に一日2度、様子伺いのお電話をさせていただいた。ご家族から、助かった、次の利用日まで頑張る等、何とかやり繰りされている姿が伝わってきた。時に、イレギュラーが苦手な方は分からないままに我慢し食事がとれない・・・、生活リズムが崩れてきて・・・、食べているか飛び跳ねているか・・・、孤独です・・・等、日が経つにつれ感謝の言葉と苦しい胸の内がない交ぜになって、実際の日々がここにあると感じた。それでも、感染防止と生活の維持の方策に皆さんの協力を得て乗り越えてきたところー何とか法人とご家族との連携がつながってきた。

4、エッセンシャルワークのプライドを持って

 ご家族、ご本人の頑張りに触れるにつけ、この仕事の大事さに改めて気づく機会となった。利用者の生活を支えている自負、この生活支援の仕事は、不要ではなく、支えられて今日の暮らしがあるのだから不急でもない。また、福祉の仕事は、公金で運営されている点からは、社会の委託を受けて成り立つ仕事である。さらに、ご家族からも、自分たちの生活と共に障害を持つ我が子の育てはやり切れない現実から、親の委託を受けての仕事でもある。「私にはできなかったが、あなたに委託したい」ということなのだ。「委託」の中に暮らしやすい社会への貢献を期待されていることをエッセンシャルワークとしてプライドを持って受け入れられる気持ちになってきた。さぁ、今日も楽しくやろう。

バードウォチングNo63 新型コロナで利用制限中だからこそ 和やかな、新たな試みのエピソードが生まれました

R2.5.1 樽見 理沙 土屋 紗織

 

*気遣いが素直に出せる、気遣いをしたくなる、そんな関係なのでしょう。そこに含まれている彼のメッセージ、こんな風に受け止めてくれる人がいる中で日々が成り立っているのです。一安心です。

 

 担当が変わって打ち解け始めたころのこと、Aさんとの間で、嬉しいことがありました。15時までの勤務の私は、おやつタイムが始まるのと同時くらいに帰ることが多いのですが、その日はちょっとだけ遅くまで残っていて、皆さんがおやつ召し上がっている中、片付けものをしていました。さて帰ろう、と思ってAさんの席の後ろを通ると、Aさんが席を立って、私におせんべいをひとつ、差し出してくださいました。

「食べていいんですか??」

びっくりして聞くと、Aさんは口を開けるように無言で促してきました。私が口を開けると、まるで親鳥がヒナにごはんをあげるかのようにポイッとおせんべいを入れ、何事もなかったかのようにクールな表情でまた席につき、おやつの続きを召し上がっていました。

「お疲れ。たまにはおやつ食べていけば?」

そんなお気持ちでおやつをわけてくださったのだと思います。気だてが良いというかなんというか!私は思わずキュンとしてしまいました。あのときの「ばかうけごま揚しょうゆ味」、最高においしかったです。ごちそう様でした!(樽見

  

*送迎車内の密集リスクを下げる工夫として、GHからの歩き登所を試行しています。こんな時だからこそ、かねてからの運動量に配慮して暮らし方を健康志向に変えることにしてみました。

 

  • 「えっ?歩き?」

 緊急事態宣言が出てから一日の利用人数を減らすため、GH系の利用者と在宅系の利用者に分けることになりました。この機会に、ケアホーム利用の方は徒歩での登所を試すこととなりました。

朝のお迎えは職員3人で男性棟にお迎えに、一番最初に出てきたのはBさんでした。通常であれば、あおいとりの車両でのお迎えですが、職員だけしかいないという状況に、Bさんはドッキリにでもあったかのような表情で右に左に顔を動かして車両を探したり、普段クールなBさんからは想像もつかない「どうなっているの?」とドギマギした様子に彼の知らなかった一面をみたような気持になりました。

20分弱ですが、Bさんにとって歩いての登所はとっても良い運動になったかと思います。しかし道路を走る車や電車が苦手なことは承知していましたが、やはり緊張した表情で歩いていました。この地で暮らしていくのですから、いつかは乗り越えていかなければと思います。そこをどうアプローチしていくか、コースに馴染むこと、電車の線路位置を知ること、散歩エリアを広げていく心づもりでいます。(土屋)

 

バード・ウォッチングNO.62 日々のエピソードから

R2.4.8 GH青い鳥 所長 井上

 直近のエピソードを紹介します。私たちは現場で日々の生活に直接触れ合います。いろいろ自らの支援のあり方や日々の下地を考える機会となっていることを感じました。

  •  「寂しかったんだよ!」

「なんでだよ!」とでも言いたいのでしょう、その日のAさんの様子はイライラが募り、私が『さくら』にお邪魔していることすら面白くないという感じでした。その日の連絡会で日中担当の職員がお休みになっていたことが頭をよぎりました。「〇〇さんがいなくてびっくりしたね。また明日来るよ。」と。そんなことを口にしたところ気持ちに届く一瞬があったのですが、またイライラ状態になりました。

 職員も人ですからお休みもあるでしょう。ですが、理屈はそうであってもそのことを理解するのは難しい、Aさんにとっては「なんだかよくわからない、なんでいないんだ」と感じる訳です。おそらく日中職員は前日の帰り頃に休みであること、代行の職員が来ますと話しているはずです。そして、当日は代行の職員や上田にいる職員と過ごしていましたが…。

彼は、自分の立場で快・不快の感性で周りの状況をとらえる認識の仕方ですから、あれこれ言われても了解するのは難しいのでしょう。感性的な存在なのですから、職員が気持ちを汲んであげることはできるはずです。「いなくて寂しかったね、ごめんね。怒っちゃうよね。」と感性に働きかける言葉かけが受け止めやすいのでしょう。「お休みは仕方ないでしょ。」と怒っていることを諫めてどうにかしようとすれば、それは彼の理解できないことを衝いてしまうことになり、立つ瀬が無くなります。私とのやり取りで一瞬ですがハッとしてくれたことにほんの少しですが彼の気持ちを代弁できただろうと手ごたえを感じつつ、やはりここが大事だと感じました。感情の凸凹があるのは普通のこと。状況に合わせながらなんとか受け止め慰めながらやり過ごしていくことで少しずつ支えられる関係になってゆくのだろうと思っています。

  • 「自信あります!」

 令和2年度の入所式になるはずだった4月3日は、主役である新人の体調不良で延期に。コロナの関係で予定が狂いに狂ったのでメンバーも少々元気がない。そこで急遽お楽しみ会になりました。

最初は景気の良い職員が大いに盛り上げ、4つ目くらいの出し物に『ひげダンスのテーマ』をバックにおもちゃの刀に向けて輪投げの輪を投げるパフォーマンスをしました。職員がデモンストレーションを数回やった後、メンバーに「やりたい人?」と誘いました。普段なら勢い良くCさんが声を出し手を挙げ、Dさんが『いざ!』という感じで手を挙げますが…。

ところが、今回はBさんが笑顔で自信ありげに手を挙げ、前に乗り出してくるではないですか。普段は耳に手を当て喧騒を少し避けるようにしているので、どちらかというと苦手なイベントと思っていたのですが耳慣れしてイメージが出来上がっていたのでしょう、タイミング良く声をかけられると皆からのBさんコールで気持ちも乗った風で『自分は得意!できるよ!』と言わんばかりです。きれいに弧を描いて輪投げが成功し、メンバーからは拍手喝采。誇らしげに席に戻っていきました。

 体験的に獲得していく方たちです。すぐにとはいきませんが繰り返し繰り返し、しかも楽しさの中、ここ何年かで仲間と一緒にイベントを経てきて、馴染み、楽しく参加できるようになり自信になってきたのだと思います。時間をかけ、探りながら巻き込みながら関わってきたことの下地が表に出た気がしました。次回も『ひげダンスのテーマ』を定番として“待ってました!”の期待感の場を設けたいと思います。

 

日々の出会い、一日一日の出来事は他愛もないことの連続ですが、意図した出会いがいつの間にか意味を持つ関わりになっていたことを感じさせてくれます。

バード・ウォッチングNO.61 いろいろなエピソードが生まれています

R2.4.1 主任 土屋沙織

  • エピソードから障害を理解する

 エピソードは、利用者の暮らしのチョッとした出来事を、利用者の心情の流れや仲間関係などを下地にして“こんなことがあった”と具体的なやり取りに焦点を当てた記録です。結果だけの行動記録では関係の深まりには繋がりにくく、この具体的な記録の中に、利用者の想いに気付くきっかけが生まれ、こちらの関わりも広がっていきます。

  • エピソードの意味

 本人にとっては、周りからどのように見られているか、肯定的にみられることで自己肯定感が育まれる土壌になります。家族にとっては、わが子の歩みを残すことになります。職員の見方を介して見直す機会となり、自らの接し方、受け止め方等へのヒントを得る心づもりで目を通していただいています。支援者にとっては、自分の関わりを振り返り考える機会としています。利用者がどんな生き辛さを抱えているか、どんな可能性、持ち味を持っているのか把握し、解釈する手立てになっている野です。さらに、第三者に託すことで、ご縁が持てた方にお読みいただくことがあります。青い鳥の実践について、社会的評価を受けるつもりでお伝えしています。日々の出会い、目の付け所、大事にしていること、将来の描き、考え方など、外の目に耐えられるものになっているか内省する機会としています。

  • エピソードSさん 「元気の源だから」

 月曜日はパン工房での店番をしているSさん。「今日はお客さんが○人来たよ」「今日は一人だけ」と一喜一憂され報告してくれます。書初めで『お客さんが来ますように』と書くほど、工房でのお仕事はSさんにとって張り合いになっています。

 そんなある月曜日、朝の会が終了後、冴えない表情をしていました。先週からの腕の痛みは良くなっているようでしたが、パン工房のお仕事をどうするか躊躇していました。体調がすぐれないのであれば工房のお仕事をお休みすることをすすめましたが、その話にも冴えない表情でした。きっと仕事をしたい気持ちがあるけれど、あと一歩気持ちが向かないそんな様子でした。

「Sさん、今日は無理をしないでできることをしたら良いですよ。」「お客様が来たら挨拶をするだけでも工房でのお仕事ですよ」と伝えると、思い切りが付いたようで「やる!」と元気に答えてくれました。少し心配でしたが、終えられて戻ってくると「お客さん、三人来たよ!」と晴れやかな声が聞かれました。

年齢や持病やらバックグラウンドの整えを一番に考え、その上でお客さんとの関わりができたらと思うところです。ともあれ生活の張りを持っていることの強みです。無理せず、今のペースを大事にしてゆきましょうね。

  • 家族会に40本のエピソードがまとめられました

 こんな出会いがあった、こんなやり取りができた、こうしたエピソードから相手をよりよく知り、楽しさを、芽生えを、好意的な持ち味や人柄を、また生き辛さの新たな解釈につながる気づきもありました。この気づきを楽しみに見守ることで、その人を支える根っことなっていくのでしょう。

 エピソードの土壌には実践の視点が大事になってきます。青い鳥では“あいうえおの実践”をし、本人の気持ちを大事にすることが本人の主体性を尊重することにつながると考えています。

 ・あ-あいさつ 気持ちの良い出会いと別れ、次の出会いに繋がる

 ・い-いたわり 失敗など上手くいかなくても気持ちを支える

 ・う-うなずき 関心をもっている、どんなことでも受け止める

 ・え-えがお  共に喜ぶ、楽しむ、安心感を与える

 ・お-おうえん 一緒に取り組む、元気になる雰囲気など勇気づける

 相手を支える根っことしての「あいうえお」の実践は、心を「軽く」してあげることにつながるのだと感じています。常識的なことですが、すぐにでも支援に取り入れることができます。障害の方と出会う場で、是非、活用して頂ければと思います。

バード・ウォッチングNO.60 ホワイトデーイベント ―贈る嬉しさ・貰う嬉しさ―

グループホーム青い鳥 所長 井上

  • おいしいラスクができました

バレンタインのお返しに今度は男性からの贈り物です。GH利用者は週末帰宅で13日(金)夕方にご自宅に帰ることを楽しみにしています。そこで、早めのホワイトデーの催しになりました。帰寮してほどなく16時半ごろ男性棟にお邪魔すると、包みの中に手作りラスクを入れ始めていたAさんがいました。メッセージカードに大きく「○○」と苗字を書きました。ちょっと型崩れした字形が「作ったよって、伝わるんじゃない!?」そんな職員の言葉に口元がほころびます。Bさんに至ってはラスクに不備がないかと一つ味見まで。贈る側に失礼が無いよう細心の味見です。“おいしい”とパクパク食べてしまうのではないのです。味見の形があって一つこんな気楽さが暮らしの中にあっていいなと感じる一コマでした。

 

  • Dさんにプレゼントする

普段DVDを自室で見ているCさんもそんなやり取りを見ており、お誘いすると手伝ってくれました。17時を過ぎ、女性棟のメンバーへプレゼントに行きます。行く直前、なんとなくためらったCさんも「Dさんにあげるんだよねぇ」で相手が確認されると表情まで柔らくなり靴を履き始めました。玄関口でDさんに遭遇するとニコニコが止まりません。照れながらプレゼントを差し出し、受け取ってもらいました。

 

  • Eさんのプレゼントだから…

 後半はEさんらがもう一方の女性棟にお邪魔しました。代表で貰ったFさんは口にはしないもののお気に入りのEさんからプレゼントされ照れてうつむき加減。他のメンバーも嬉しそうに体を揺らしていました。戻ろうかというところで携帯電話が鳴り聞いてみると、お風呂に入っていて渡してもらえなかったとGさんが残念がっているとのこと。それは失礼でしたということで戻ってお菓子を手渡しすることができました。Gさんからは「ありがとう」と笑顔でのお返事でした。

 

  • 家に持って帰る

 時間的にも規模的にも大きいイベントではありませんが、ただお菓子を作ったり、ただ渡したりするのではなく、その先に仲間がいることを意識できるような働きかけをしていきながら気持ちの交換ができることを大事に思っています。Gさんはいただいたお菓子をつぶれないよう大事に大事に家に持って帰ったそうです。