福祉の心を伝えるエピソード

1,基本的な障害の捉え方

・障害は社会環境との関係の中に生きづらさが生まれる、との社会モデルで捉えています

2,青い鳥の歩み

・青い鳥のEさん、Tさん等の第一世代のご家族の方たちは、基本的人権がどのように具体的に施策に反映されるか、の点で社会運動的に頑張って少しずつ手応えをつかんできた時代だったようです

・当然、その頃には見えない課題や不十分な手応えの中で、模索しながら現実的な一歩一歩を確かめながらの歩みだったことでしょう

3,現在の課題として

・現在も同じことです。見えない課題があります。何が整備されることが大事なのか気づいていないこともあります。また、制度が整ってきたとはいえ不十分な点も多々目に付きます

・社会の障害観の問題―肝心なこの仕事を担う人手の問題を見れば、魅力的な職種になっていないから人が集まってこず、補充に悩ましい実際です

・制度面では障害福祉から介護福祉への切り替えの問題も、SSの利用制約も、障害年金の問題等々、挙げられます

4,福祉をすすめる心構え

①制度の不備について

・昔から制度が整っていないからできない、しないと諦めることはしてきませんでした。制度にないことは、必要なら自分たちで、私的レベルで取り組んできた実績が語られています

・その気持ちは福祉の基本姿勢として受け継いでいる第二世代の青い鳥です

助け合う社会のあり方―ボランタリィな姿勢

・個々人のボランテアにより手立てされてきたこともあります。法人のボランタリィな精神で対処してきたこともあって然るべきです

・社会の助け合いの仕組みにあって法人もその中の一つ、また法人枠を超えて私的な力を発揮してゆくべきこともあると考えています

③制約の中で

・個々人のボラの限界があります。法人のボランタリな限界もあります。法人の業務としての限界もあります

・それぞれが継続していくことを前提に、社会的な課題を抱えている人を目の前にしてできることをしてゆく社会でありたいと思います

5,利用者の生き方をどう見るか

障害観を見直すことから―重度の障害者の努力する姿を伝えることで、彼らの生き方を支える仕事の魅力を知っていただきたいと思います。この仕事を通じて自分の人生も豊かになる、と入職する前に希望がふくらむようなご紹介をしたいものです。

・一方、後継者が得られず廃業する鯉料理の店(2.17NHK)、社会的にも立ち行かない業種があることも承知しておかなければと思います。若い人が集まる職種にしなくては。

6,生活支援の魅力を伝える

・障害の重さに関わらず、彼らの生き方に関心を持ってみることで、見え方が大きく変わってきます。彼らの身近な環境である私たちは、素敵な生き方をエピソードで確認したいと思います

バードウォッチングNo.72  「GHの暮らし―朝の動きはこうだよ―」

R3/7/27

グループホーム青い鳥

所長 井上

 

 生活介護を利用している方々のGH―管理者として毎日顔を出しているものの、細かな個々の生活のすすめ方は現場に託しています。ところが、急遽朝番のヘルプに入らなくてはならず、さくらに行った時のことです。

入室早々「あ、井上さんだ!」と笑顔で挨拶してくれたことに救われつつ、あまり流れを把握していないため不安感が漂います。壁に張ってある流れのマニュアルを頼りに進めていきますが、それでも細かいところまではわからず戸惑うのです。

さくらのメンバーは思案している私の姿を見て、「ひげ剃ったよ!」「歯ブラシも終わった」「ご飯の時のお茶は紅茶ね」「僕はコーヒー。砂糖とミルク少し入れて」「薬はここ」「薬は飲んだらこっち」とあれやこれやときちんと伝えてくれました。皆さん一通り朝の動きが終わるとタブレットを見たり、TVを見たり、雑誌を広げたりして思い思いの過ごしで日中活動の送迎を待っていました。

 それぞれ自分に必要なことだけではなく、周りの仲間のことまで気にかけ教えてくれます。それはしばらくぶりに現場に入る私の気持ちを察して下さっていることもあります。個人生活とはいえ、ゆるやかな小グループ生活ですからおのずと制約も、お互いの遠慮や配慮も生まれるのでしょう。それが生きづらさと社会性の土壌とのバランスを常々に考慮しながらの展開が求められることも改めて感じました。皆さんの中にGHでの共同生活数年分の経験が活きていました。皆さんよく見ているし、また、仲間との生活ですから職員の手が空くのを待ちあるいは、「次に行くね」―Aさんのことが終わったら僕のところに来てくれること―をよく理解してくれています。積極的に手伝ってくれる方、マイペースに待ってくれる方がいて、和やかでゆるやかな暮らしぶりなのだなぁと改めて実感しました。

この先、完全に親御さんの元から離れる際はまた一つ壁を乗り越えなくてはならないかもしれませんが、仲間とのこのような生活ならば次のエネルギーになるはずと思ったところです。

バードウォッチングNo.71「壁にぶつかって」

R3/5/12

グループホーム青い鳥

所長 井上

 

4月はいろいろなことが変化する季節。シフトや場所や職員が変わるのは利用者さんにとってはとても大きいこと。利用者さんの中にはいつもと違う状況でなんだか落ち着かなかったり、鬱屈するような心情に支配されたり…。Aさんの場合は、それが事業所へ足が向かず慣れ親しんだ空き家になっている実家に帰ってしまうことになりました。

無断欠勤の連絡を受けて、もしやと思い自宅まで。呼び鈴を鳴らし、しばらくするとドアが開きAさんが出てきました。「なにかあった?迎えに来たよ」と咎めるような口調にならないように、細心の注意を払います。「ホームに戻ります」という彼。「時間にならないと職員はいないし、いまAさんが気になっていることを聞きたいな」と、やんわり帰寮を断りました。戸惑いが顔ににじみ出ましたが、「事故でなくて良かった」と伝えると心なしか緊張が薄れました。

勤務地に到着し、2階で話を聞きます。「4月はいろいろ変わって苦手です」「もう少しお伝えを丁寧にすれば良かったですね」。こんなやり取りをすると、亡くなったお母さんのこと、実家の今後のこと、主治医との会話の内容、作業活動で自分ばかり手伝いを任されること、お勤めに出ていた頃のことなど堰を切ったかのように話をしてくれました。話の内容は大昔のものもあれば、愚痴っぽいものや将来の不安のようなものまで。同性の所長との面談となれば構えてしまうところですが、彼も今回はよく語ってくれました。「何かあったら、相談してくださいね」「日中の施設長ともお話してね」とお伝えして終わりました。

ホームに戻り、業務日誌を見ると異動のあった他のメンバー二人は支援員との会話でここ数日のあれやこれや話し、不安を吐露しているようでした。Aさんは普段の様子からクールにふるまっている風に見えて実は内面に不安をたくさん抱えて、しかも言葉での表現がしづらいという生き辛さを抱えているのだなと感じました。他のメンバーのように話ができ、思いをぶつけ解消してゆくことができない彼への応援は、「何か気になっていることある?」と折々に転ばぬ先のカウンセリングの場を意図して設けること。もう一つは、年齢的に“がんばれ、がんばれ”と言われてきたであろう世代です。陶冶的な教育的な関係は“おなか一杯”で食傷気味のはず。注意されても修正できない自分の壁や上手く気持ちを整理したり、伝えたりしづらい自分の限界的なものにぶつかりながら困惑している本人がいるのだろうと感じています。そうすると、本人の心情を推し量り、状況との仲介をする心づもりで接することが大事になると感じます。

バードウォッチングNo.70 GHのクリスマス会への思い

R2/12/22

グループホーム青い鳥

所長 井上

 

 年末年始は節目の行事で、日中活動も含め楽しみが目白押しの季節。クリスマス会や正月はGHのメンバーに限らず年中行事の中でも、とても楽しみにしている事柄です。正月もクリスマスもどちらも少し宗教色をはらんでいますが、多くは季節行事の一つとして仲間とわいわい過ごし、ゆく年くる年の節目を楽しむ形になっています。今回は日中活動からのゲスト職員1名も含め、12/20はクリスマス会で楽しい一日を過ごしました。

 

〇自分たちでデコレーションするケーキ

 市販の美味しいケーキを頂くのも嬉しいのですが、今回は自分たちでデコレーションをして『作る楽しみ』を加えました。生クリーム、イチゴ、キウイ、パイナップル、チョコレートスプレーなどなど材料がそろうだけでもうニコニコ嬉しさが表に出てきます。洗ったり切ったり塗ったり人日にも加わり、色彩豊かに仕上げていきます。自分の好きなものを乗せ、可愛らしく、あるいはなんだか笑える形になっても買うだけでは味わえない『一緒にした感』が残るものになりました。

 

〇期待が膨らむプレゼント交換

 プレゼントは幾つになっても嬉しい物でしょう。選んで誰に渡すのか考えるだけでも楽しいことです。そこに金額の多寡は関係ありませんね。プレゼントタイムはプレゼントを机の縁に並べ、音楽に合わせて机の周りをウォーキング。音楽が止まったところで目の前のプレゼントを頂く演出です。プレゼントを開けるドキドキ感を抱きながら一人ひとり中身を確認して皆さんにご披露します。

カレンダー、ボディータオル、ハンカチ、フォトフレーム、ヘアブラシ、ボールペン、マジックペンセットなどなど。欲しかったもの、意外だったけど嬉しいものとそれぞれでしたが、どのメンバーもご披露する時の笑顔は一緒でした。きっと仲間から“いろいろあったけど今年もお互い頑張ったものね”と支え合う気持ちを感じ取っているのですね。その中でも、Aさんの「仕事の時に、このタオルを使います」と嬉しそうに言った言葉は特に印象的でした。

 

〇たっぷりのディナー

 さて、お待ちかねが続いてクリスマスディナータイムです。これは期待を裏切らず、みんな大好きなフライドチキンと、これまた大好きな手巻き寿司。思わずニッコリする豪華な取り合わせで「太る~」と口々に言いつつも、手と口は良く動いてしっかり完食。大満足のクリスマスを締めくくりました。

 

〇来客も嬉しい

ゲストの職員はプレゼント交換までで帰りの動きになるのですが、Bさんは名残惜しいのか、ご自分の部屋に招待して室内をお見せしていました。GHを利用して、さらに親亡き後はお客様をお迎えすることがめっきり無くなってしまった暮らしぶりでした。他部門の職員が来寮してくれたことはとても嬉しいことで、おそらく親戚が遊びに来てくれた感覚にも近いのではないでしょうか。こう言った雰囲気を醸すこともGHの仕事の一つではないかと、ふと思う一コマでした。

 

 次は正月が大きなイベントになります。親亡き後、GHで過ごす長期の休みは期間の長さや費用面や職員の手で課題を残しますが、ともあれ楽しく過ごしてもらい、新年からのエネルギーにしていく“リフレッシュ”期間であることには変わりありません。お節料理に、初詣に、ちょっと大人感覚でお屠蘇(とそ)も含めて、楽しみを提供できればと思います。

バードウォチング No69 エピソードをまとめて

R2.11.26

あおいとり日野

主任 土屋 紗織

 年5回の家族会、その折に日々の出会いをエピソード集としてまとめてきました。特に今年度はコロナ禍で皆さんが集まれず、エピソードを通してご家族の皆さんに安心感を得ていただきました。現場を担う立場からエピソードへの思いを整理してみました。

 

*エピソードを通して思うこと

 青い鳥でのエピソード記録が始まって約2年。利用者の皆さんと過ごす日々の中で、具体的なやり取りに焦点を当てた記録がエピソードとなっています。

エピソードを書いていると、『以前も同じようなエピソードを書いたのでは』そのような思いで振り返ってみると、やはり似た内容を書いていることがありました。確かにその方へ着目している部分は一緒なのですが、半年、1年と経つうちに、その方の心情をどう受け止めているのか、気づきの視点、解釈の仕方で小さな発見や小さなふくらみが感じられます。私自身が変わってきているのです。またその時の利用者、職員の心情により同じ場面の事柄でも新たな展開になることがあります。それは私の捉え方が変わってきているということと、プラスして利用者の皆さんも私たちへ見せる姿に変化があるのだと思います。

Aさんと私との関係が少し変わってきて、やりとりもより和やかになる節目を作ってゆくようです。エピソードは単なる記録ではなく、こんな歩みをしてきたとその方の生きる姿を残すものになると感じています。そして私たち職員にとって自分の支援を振り返る良い機会となっています。

 

<皆さんのエピソードを読んで>

それぞれのエピソードを読ませて頂きました。クスッと微笑ましいエピソードもあれば、「そうなんだ」と関心させられるものなどなど利用者の新たな一面を捉える事ができました。職員の視点の軸としてあおいとりが大事にしている“あいうえお”の実践がエピソードを生んでいるのかもしれません。それと同時に支援の質が常に問われる仕事だと改めて感じました。

一時期流行しましたが、アナと雪の女王の一節が思い出されます。

“ありのままの姿見せるの、ありのままの自分になるの”

ありのままの姿=わがままな姿ではなく、その人らしさなのだと思っています。私たちの常識を押しつけては窮屈になってしまい悪循環です。“こうあるべき”という固定された見方をリセットしなければ、利用者の心情の見えるものが見えなくなってしまうのかもしれません。私自身も表面的な行動に捉われてしまいがちですが、その行動の背景にある「だって…」「なに?これ?」「苦手だな…」等の思いに気づく努力をしています。その行動にはどんなメッセージがあるのか、こういう見方も良い、もしかしてこういう意味なのかもしれない、とりあえず受け止めようとそんな気持ちが湧いてきます。一呼吸おく関係こそが、安心感、構えないでいられること、素直さの土壌づくりとなると感じています。

バードウォッチングNo.68「こんな出会いもあります」

R2/11/18

グループホーム青い鳥 所長 井上

「久しぶりですね。」

もう三年も前のことです。他市より緊急的に受け入れを依頼され、ショートステイと日中活動を利用された方がいました。当時、一ヶ月ほどのご利用でしたが、日中・生活共に馴染んで過ごしていました。青い鳥に対してとても印象深かったのか、行き先が見つかった後も何度か顔を見せてくださり、仲間や職員とも「元気?」「元気だよ」とあいさつを交わしていました。

しばらく訪問がなかったので落ち着いた生活をされているのかな?と思っていましたが、九月に入り久しぶりに姿を見せてくれました。ご本人の変わらない姿にひと安心し近況を聞きました。「頑張っているよ」「畑の仕事なんだよ」「朝も早く起きてさ」「暑いしね」「バスが迎えに来るんだよ」などなど、今通っている通所先のことや生活の場のことを教えてくれました。20分くらいの滞在でしたが楽しくお話ができ、帰る後ろ姿は少し満足感が漂っているような気がしました。

ご本人としては日々のあれこれ面白くない部分を聞いてほしかったのでしょう。他愛もないおしゃべりの中で気がまぎれたのかもしれません。そんな会話の中に、受け入れられている実感があったのかもしれません。SSの頃と変わらない感じでウエルカムされたことで安心したのでしょう。たった一ヶ月の滞在でしたが、青い鳥がおしゃべりしにふらっと気楽に立ち寄ってくれる場所になっていることに職員としてはとても嬉しく感じています。

こんな出会いもあって、障害をもつ方たちの暮らしの支え方は直接・間接で見守る姿勢がちょっとしたところにもにじみ出てきて、支え手となっていることを感じます。事業所として、直接利用契約の方にとどまらず、同じ地域に暮らすお仲間への気遣いの目が暮らしやすい街の土壌になってゆくのだろうと改めて感じる機会でした。

 

バードウオッチングNo.67 休日、GHの仲間とのお出掛け ~それぞれの大人色を出して~

R2/11/11

グループホーム青い鳥 所長 井上

イチョウ並木とコスモスと

 昭和記念公園イチョウ並木は今年も見事で、目論んでいた通りの構図で集合写真をパチリ。自然と笑みがこぼれます。落ちていた銀杏を踏みつけてしまい、匂いに鼻をつまみ和やかに散策がスタートしました。途中、健脚グループとのんびりグループの二つの班に分かれ、健脚グループは奥の広場手前にあるコスモス畑を目指し元気に歩きます。上着を着て歩くとうっすら汗をかきますが、秋の空気がとても気持ち良く、爽やかさが勝っていました。コロナ禍だからこそ広々とした野外への人出は多く、ウイズコロナはこんなところから始まってゆくのが良いなぁと思いながら…。

 

〇ビールが旨い

コスモスを愛でた後、ひとやすみ。売店で思い思いの飲み物を、お財布の使い方、お金の出し方など、お二人ほど応援しながら、上手にお買い物ができる方たちも、あれこれ「どっちにしようかなぁ」の迷いに和やかさを感じました。大体の人は麦茶やオレンジジュースなどですが、お酒をたしなむことができるAさんにはビールをお勧めしてみました。以前も似たようなシチュエーションがありましたが、職員の前でお酒を飲むことに後ろめたさがあったのでしょう。その時には頑なに遠慮されていました。今回は「Aさんが美味しそうに一杯やる姿を写真に撮りたいなぁ」や、「歩いた後の一杯は最高だろうね」など誘い文句を並べてみました。売店から戻ってくる彼の右手に1本の缶ビールが。東屋で美味しそうにグビグビとやる姿がとてもリラックスしており、『大人の休日』になったことに嬉しくなりました。飲酒は社会的に場面を選ぶ行為ですが、またこのような場面になったら、本人から遠慮なく「飲んでもいいかな?」と言葉にできる関係になればなぁと思います。

 

〇押し花にもするわ

 紅葉が進む昭和記念公園ですが、見るだけの楽しみではないのがBさんです。イチョウケヤキ・サクラ・ガマズミ・プラタナス…。大きなものから小さなものまで、黄色・茶色・赤とカラフルな葉っぱを良く見つけて嬉しそうに拾い上げていました。そこで持っていたビニール袋をさっと広げ、入れて行きます。

「集めた葉っぱは何に使うのかな?」。

Bさんは「ミーちゃんの」と。

いつもGHで持ち歩いている人形の洋服か何かに使うような感じで答えました。「押し花はどうかな?」と言うとパッとひらめいた感じでニコニコ。追加の一言が楽しみを増幅させる形になり、良い休日を演出できました。

 

〇7人の仲間とのお出かけでしたが

 4~5日前から、そして前日の準備に、当日の朝もみんなでお出掛けの何となく感じるそわそわ感が、子どもたちとは違う大人の期待感。お洋服もお金の準備も、女性の方々の身だしなみも気遣ってもらいながら自分の思いが少しずつ熟してくる経験になり…。これも楽しみなことです。

 GHの大きなテーマ『リフレッシュ』の一端を担うひと時になりました。