バード・ウォチング No27 仲間関係から気づかされたこと

H30.3.14 理事 村瀬

 助け合いの中で生きられたらいい人生であろう。自分の足りないところをそれとなく補ってくれたらうれしい。また、いつも和やかに接してくれる人がいることが安心だ。そんな仲間が身近にいてくれたら心強い。確かに、現実は容易くないこともままあるが、人生の歩みはこうあってほしいと描いている。

  • AさんとBさんとの言い争い

 担当職員の説明に反発的な発言が続くAさん。それを近くで聞くBさんは怒れてしまったようで「やんなくていいよ」と止めて欲しい旨、批難する。説明が終わると双方、何事もなかったように取り組み始める。

批難する気持ちはよく分かる。自分が期待している事柄を否定されるのだから。他方、反発する気持ちもその苦しさを推し計れる。自分に自信がない、自己肯定感の薄さにあるのは確かなのだろう。そんなバックグランドを感じ取ってか、あるべき論でたしなめたりすることもなく、淡々とやり過ごす関わり方に大したものと感じさせられた。

  • C子さんとDさんの支え合い

 C子さんは感情の起伏が大きく、時に戸惑わされる。彼女にとって人を選り好みしないDさんとの出会いは素直な気持ちでお姉さんとしての振る舞いができる相手だ。そこには年長者の満足感ある様子を見てとれる。

 一方、Dさんは自律的な活動が少ない方だ。多少のわがままを受け入れてもらい、C子さんと居ることの心地よさを味わっているようだ。そんな彼のあり様が、C子さんを勇気づけるメッセージになっている、と感じた。≪C子さんがいてよかった。優しくしてもらってうれしい。いつも気にかけてもらって、この仲間で安心だ≫こんなふうに彼の心情が伝わっているのだろうと解釈している。

C子さんはいろいろ生き辛さを抱えて悩ましいこともあるようだが、Dさんによって、〝そんなC子さんでもOK″といわれることで自分の存在に自信をもらってきた一年だ。

  • 人間関係を軸に見ていく

 こうしたやり取りは能力的な支え合いではなく、人間関係の支え合いである。能力の嵩が問題ではなく、受け入れられ、評価され、応えてもらい、見守られて「あなたが大事」を注ぎ込まれた嵩が生み出す領域である。受動的なDさんの心情さえもC子さんには積極的な意味を持って作用している。関係の不思議さだ。

 東洋医学では「心身一如」と言い、心と体は互いに強く影響し合う関係であり、だから障害は能力面だけに表れるものではない、心情面に影響するというのだ。分からないことが分からないで終わらない。分からないことは確実に不安を伴う。

その不安を底支えするのが関係だ。関わりは関わる人の思いが反映する、頑張りや努力に気付き、気遣いながらも楽しみに見守る。こうあって欲しいからこそ長い目で見守り、自己肯定感につなげる視点を持ちたいと感じている。能力論や発達論ではなく人間関係で地道に改善していく土壌のようだ。