バード・ウォチング NO28エピソード  現場の気づきから①

H30.3.15

 ここに挙げられたエピソードは、「私」のことに穏やかに付き合ってくれることで安心感をもらい、人と出会うことで心地よさを味わっている姿です。それが「あなたが大事」を注ぎ込むことであり、自己肯定感を高めるベースになっているはずです。この点がしっかり根付くことで、好ましい主体的な姿に出会う機会が増えていくことでしょう。楽しみながら見守っています。

  • 「僕もいるよ」って支えてくれたから樽見理沙)

 Dさんは大きな目とはにかむような笑顔が魅力的な女性です。でも時々、涙ぐんだり険しい表情になったりすることがあります。そんなとき私たちは、素敵な笑顔を取り戻すべく奮闘します。あっち向いてホイをしたり、にらめっこをしたり、大好きな芸能人の話をしたり、「大丈夫、そばいるよ」の気持ちを注いでいます。

 あの日は何だか涙ぐんでいました。私はDさんの隣にまったく同じ姿勢で座りました。程なく真似っこされていることに気づき、私の方をちらと見て、ちょっと笑ってくれました。真似をし続ける私に苦笑して、姿勢を変えます。さっそく私も真似します。今度は右手で頬杖をつきます。私も真似します。

こんな二人の真似っこ遊びを見ていた向かい席のEさん、ニヤリと笑って同じように右手で頬杖をつきます。三人とも同じポーズ。Dさん、これは困った、という風に笑っています。Dさん、今度は左手で頬杖をつきますが、このころになると真似っこを期待しての素振りになっているようでした。私たちもすぐに真似っこ。もう一度右手。すかさず二人で、また真似っこ。Dさん、おかしくてたまらない!というように、机に顔を伏せてしまいました。Eさんのお茶目な笑顔は、Dさんに向かって「ぼくもいるよ」と言っているような気がしました。こんな戯れ合う関係が安定のベースだなと感じとところです。

 

  • 仲間と一緒に過ごしているから(大久保淳子)

 光の差し込みが屈折して、時に不思議な陰影を見せる踊り場が好きなGさん。ちょっとみんなと間合いがある位置ですが、「Gさん、また福祉の集いで青い鳥の歌を歌うんですって」と歌い始めると“♪~真っ赤に流れる 僕の血潮~♪”のところでジェスチャー、唇を指さし、腕をなで下ろし、ガッツポーズの振り付けをそれらしくしてくれました。毎年参加している福祉の集いで歌っている青い鳥の歌がしっかり積み上がっていたこと、空想が好きでその中にいることも多いのですが、青い鳥の中で現実の仲間と一緒にしっかり過ごしていることを改めて感じた場面でした。

 なかなか噛み合わない時、アレコレ思いを巡らせるのですが・・・。でも、目を輝かせて、身を乗り出して、声を上げてつながる時、《これか!》と思わず高笑い的に声が出てしまいます。うれしいことですから。

 

  • 二人の自分》の折り合いに努力している(宮本 浩)

 折々にIさんって優しいなと感じることに出会います。散歩のとき、遅れている仲間を待っていて、そばに寄り添ってあげています。また、その日の頑張ったことを発表する場面でも、後から手を挙げた人に「どうぞ」と言って譲ってあげています。にこやかで人当たりの良い人柄だけに優しさも分かるけど、周りに気を使うからこそ時に逡巡したり、ためらったり、ある時は尻込みしたり…。

 “みんなの中の自分”があるから優しくなったり、不安になったりするのでしょう。”自分は自分らしく”があるから自分の思いが伝わったり、分かってもらえると満面の笑みで動き出せるのでしょう。きっとIさんは《二人の自分》の折り合いに努力している今なのですね。どうしたものかな?と思う時も、結構グループ活動に参加している姿を見ると着実な歩みを感じます。