バード・ウォチング No33 障害者の笑顔に主体性を読み取る

H30.6.11 日野青い鳥福祉会 村瀬精二

 

 5月20日朝日新聞、山口さんの「温かい言葉をもらって娘が笑った」の投稿に、障害者の自己表現の奥行きを感じさせられた。肢体不自由で知的障害の高校3年生の娘さんが送迎バスの添乗員の優しい言葉を受けて「ニコッ」と笑った。その笑顔に娘さんの「精いっぱいのお礼」の気持ちを感じた、というものでした。

 食事も一人では食べられない、また話せない障害の重さを抱え、こんな程度しかできないと嘆いているわけではない。いい添乗員に出会い大事にされて感性豊かに育っていると、受動的な姿に満足している話でもない。優しく声かけられて、精いっぱいのお礼をする主体的な生き方に着目しているのだ。

行動に着目したら、声かけられて「ニコッ」とするだけと映るかもしれない。しかし、気持ちに着目したら彼女の主体的な生き方が浮き彫りにされるではないか。「いつもありがとう」「私の気持ちを受け止めて」そんな風に笑顔を解釈したのだ。関わる者がどのようなスタンスに立つか、どのような人間関係を持つかによって、そこにある生き方が変わってくる。小さな振る舞いも新たな意味を持って人間関係を動かす力になるのだ。

行動に価値があるのではなく、「精いっぱいのお礼」と社会的な意味を感じ取ったところに育ちの土壌がある、と感じた。