バード・ウォチングNO47   職人気質な仕事ぶりに魅せられた

R1.5.17  理事 村瀬

  • 「まだ、終わっていないから」

 私の執務室の窓外に人影が、覗いて見るとAさんが草むしりをしている。「草むしり?一人?」と声かけながら、もしかしたら…と思う。ついこの間、事業所の玄関口の花壇がきれいになっていて、誰が?と気になっていた。かつて畑作をしていたとのことで、作業の一環で環境整備をしてくれたと感じた。ところが「俺一人」とのこと、「職員は?」「樽見さんが見に来るけど」と。先週に続いて「まだ終わっていなんだよ、奥が残っている」と率先垂範の姿である。まったく一人仕事でこの気持ちの良い片付けに驚いた。

  • こんな仕事がしたい、とのイメージがある

 様子を伺いに出てみると、「これ切ってもいいかな?」と伸び放題の枝を切りたいとのこと、剪定鋏を持ち出しバサバサ切り始める、思い切りがいい。足の不自由さがあり屈みにくいが、切り落とした枝を集め、残っている草をむしり、ひょいひょいと手際のよい動きをする。頭に巻いたタオル、汗の滲んだ額、自前の黒い作業手袋、職人だ、庭師だ。「お母さんの畑仕事も手伝ってるんだ?」これは明らかに戦力だ。そんなこと思いながら見ていると「これは仕事になる?お給料もらえるかな?一杯もらえるように言ってよ」とのこと。さらに終わり際に定例プロのカラオケメンバーから「最後に歌うか?」とのお誘いがかかるが、「カラオケはお給料にならないから」と潔くお断り、さらに「片付けちゃう」と手際の良さ、仕事のイメージがはっきりしていることを伺わせた。草むしり、剪定、集めて、ゴミ袋に入れて、道具も片付けて終了である。

  • 主体的な生き方だ、大人への歩みを目指して

 この仕事ぶりは、一人前の作業補助員がこなす仕事に値する。分かる仕事、できる仕事を自ら「やる」と言ってやり切ってくれる。この生き方は素敵だ。こんな仕事ぶりを男らしいというのだろう。カッコイイ。ここをテコに10年後の50代になった彼の姿を描きたい。気のいい青年がどんな大人の姿を見せてくれるのか、期待が膨らむ。

 日常から積極的によく動ける青年像が定着している方だ。パン事業の作業・鉄板拭きも昼休みのお弁当の残飯や各部屋のゴミ集めも、平日の外作業にしても好ましい評価を得ている。フリータイムで毎朝描いている魚の絵にしても面白い。毎年、代表作を抽出して見ごたえのある画集にしていただいている。また女子の中一人男性として刺繍にも参加している。女性職員に正当に接することのできる機会であり、淡い心を満たすものであり、結構なことである。そして、ガイヘル活用では夜のイベントを希望される。外でビールを飲みたいとのこと。大人の姿への憧れだろう。そんな日常の姿を見せる青年の歩みに伴走しているのだ。

  • さあ、どんな大人になっていく道筋を描けるのだろうか

 法人として、工賃規定の見直しが始まっているが、彼の頑張りに合わせて支払い方を考慮出来たら働き甲斐もやりがいも生まれるだろう。週に一度好きなビールを飲んだり、お給料日にご両親にビールの一本でもプレゼント出来たら素敵なお給料の使い方と言えるだろう。

 社会性は順次、社会経験を踏んでいくにつれ身につくものだし、弁えていくものだから着実な歩みになるように応援したい。