バード・ウォッチングN0.55 「伝えられなかった気持ち」

 R1.12.2 生活支援員 樽見理沙

 日々の出会いは、私にとっても本人にとっても思わぬ展開をするもの。ときに“どうしょう…”とその場の対処に気を取られてしまうことも。そんな折、失礼をしてしまったエピソードです。

 作業を終え、昼食の用意が出来るまでの間に新聞を読もうと2Fに降りたAさんと、自席でくつろいでいたBさんとで、トラブルがありました。

  • 「嫌われちゃった」

Aさんは、新聞を読みながら、いつもの癖で、テーブルを叩いて大きな音を立ててしまったようでした。その音に驚いたBさん、
「うわ~~~っ!!」
と、耳をふさぎ、大きな声を出して不安な気持ちを表現されました。当のAさんはBさんの大きな声に驚き、顔をこわばらせてBさんを見つめていました。すぐにAさんをさりげなく3Fに誘導し、お二人に距離を置いていただきました。落ち着けるようにとソファーにお連れすると、Aさんはとても悲しそうな顔で職員を見つめ、「Bさんに嫌われちゃった!」と。
胸が痛くなるような声と表情でした。‟Bさんを驚かせるつもりはぜんぜんなかったんだ、でも驚かせてしまった、嫌われちゃった、嫌わないで、どうしよう、ごめんね。”たくさんの気持ちが、その一言に込められているのが伝わってきました。「大丈夫だよ」と慰めつつ、とりあえずソファーでゆっくりしていただき、その場は収まりました。

  • 私の思い

私は、Aさんの気持ちをBさんにお伝えしたいと思ったのですが、すぐに伝えても、Bさんも今は気持ちが高ぶっているだろうし、タイミングを見計らってお伝えするのがいいかな…と思い、すぐにはお伝えしないことにしました。
少し時間をおいてBさんにお話ししよう、そう思っていたのに、ついうっかり忘れてしまい、結局私は「Aさんは、驚かせてしまったことをとても申し訳なく思っていらっしゃいました」ということをBさんにお伝えしないままでした。
 その後、二人の間にわだかまりが残った様子は無く、この出来事が尾を引くことはありませんでしたが、Aさんのお気持ちを、私はちゃんとBさんにお伝えしなければならなかった、と思います。もしかしたら、Bさんの方にもAさんにお伝えしたいことがあったかもしれません。

  • 私の仕事として

自分の気持ちを人にうまく伝えることは誰にとっても難しいことですが、それがより不得意で、お手伝いを必要としている方が利用者さんの中には多くいらっしゃるように思いますAさんのあの一言に込められていたたくさんの気持ち、ご本人からBさんにうまく伝えられなかった気持ちを感じたのだから、それを伝えるお手伝いをすることは、私がしっかりとするべき仕事だった、と反省しています。