バード・ウォッチングNO.58 生地の出会いだからこそ

R2.2.3 上田主任 初村啓義

Aさんの現況から、この仕事のやりがいに類することを折々にまとめる機会を得てきました。難しさと共に自分の至らなさを感じながら、障害を持つ彼に育てられている自分を改めて感じます。

  • 二人の穏やかな過ごし

 この日の午前中はAさんと二人での公園清掃、落ち葉掃きを手伝ってもらう。仲間の刺激がないこともあり、自分だけを見てもらえる安心感からぐずり的なアピールも少なく、補助的な押さえや、運んでもらったりの作業もよく取り組めました。お茶の時間の吐く癖も心なしか少ないように・・・。
 作業所へ戻り、いつもの仲間と合流しての昼食は危なっかしさを抱えながらですが、午前中の穏やかさが残っているようで強いイライラにならずに終えることが出来ました。

  • 悪い循環に差しかかってしまったが・・・

 午後は仲間を交えてポスティング。仲間の言葉に反応する形で作業中からイライラが見られました。帰りの車中、Aさんの怒りが爆発。同乗のBさんがいつも以上に多弁で、Aさんのいら立ちが募ってきていることが感じられました。なんとか場の切り替えを図ろうとするものの、私の思いがBさんには届かず、ヤキモキしておりました。
その場でBさんに今のAさんの状況を話せば分かってくれる方なのですが、その話はAさんの怒りを誘引するだろうと思い、躊躇しました。そうこうしているうちに「〇〇しちゃダメよ」とAさんのNGワードを口にしてしまい、心配が現実に。Bさんもさすがにここに至って複雑な表情で押し黙って・・・。運転しながらの「Aさんの嫌いな言葉なんだよ」にBさんも承知していて「つい言っちゃいました…」と。Aさん自身は大声を上げたことで「ノドが痛い」と訴えてきて、取りなしてもらいたい気持ちを出してきました。

  • 二人の気持ちをおもんばかりながらも、私まで・・・

 Aさんの怒れてしまう気持ちを察しながら、立ち直れるようにと試みている最中にも関わらず、私の中に《ちょっと勘弁してよ》と相反する気持ちが湧き上がっていました。Aさんに怒鳴られた後のBさんの表情を見て《別にBさんが悪い訳でもないのになぁ…》と思い、Aさんの方に憤りを感じている自分がいました。そんな思いから「大きな声を出したからノドが痛いんだね」「別にそんなに怒ることでもないのに…」と口が滑っていました。
 Aさんは少し考えるように動きが止まり、「フン、いいですよ。♯$%&*!?」と噛み合わなかった怒りをぶつけるかの様でした。その後は、私の表情を窺うように、いつもの「足痛い、初村さん」と関わりを求めてきます。私自身、すぐには気持ちが切り替えられず、作業所に着くまでAさんの方が私の機嫌を伺う感じでした。反省です。

  • 一緒に歩んでいる

 私は40代、キャリア10余年、主任の立場、自分のあるべき姿を省みながら努力しているが、うまくいったり、いかなかったり、失礼をしたり等の日々である。利用者の生地に飛び込んでいく関係だけに、こちらの度量も試される。支援の世界も「負けて覚える相撲かな」であり、利用者に稽古をつけてもらいながら地力を養っていくことなのだと感じています。
 それでも総じてみれば、AさんもBさんの出会いも凸凹しながらも、なんとか気持ちがつながって、「言い過ぎた」「いいえ、私こそ」と互いの気持ちを分かり合い、出直す感触になっている。ぶつかり稽古のような日々ですが支援の感覚を心技体で身に着けている時期とも受け止めています。