R2.4.1 主任 土屋沙織
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エピソードから障害を理解する
エピソードは、利用者の暮らしのチョッとした出来事を、利用者の心情の流れや仲間関係などを下地にして“こんなことがあった”と具体的なやり取りに焦点を当てた記録です。結果だけの行動記録では関係の深まりには繋がりにくく、この具体的な記録の中に、利用者の想いに気付くきっかけが生まれ、こちらの関わりも広がっていきます。
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エピソードの意味
本人にとっては、周りからどのように見られているか、肯定的にみられることで自己肯定感が育まれる土壌になります。家族にとっては、わが子の歩みを残すことになります。職員の見方を介して見直す機会となり、自らの接し方、受け止め方等へのヒントを得る心づもりで目を通していただいています。支援者にとっては、自分の関わりを振り返り考える機会としています。利用者がどんな生き辛さを抱えているか、どんな可能性、持ち味を持っているのか把握し、解釈する手立てになっている野です。さらに、第三者に託すことで、ご縁が持てた方にお読みいただくことがあります。青い鳥の実践について、社会的評価を受けるつもりでお伝えしています。日々の出会い、目の付け所、大事にしていること、将来の描き、考え方など、外の目に耐えられるものになっているか内省する機会としています。
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エピソードSさん 「元気の源だから」
月曜日はパン工房での店番をしているSさん。「今日はお客さんが○人来たよ」「今日は一人だけ」と一喜一憂され報告してくれます。書初めで『お客さんが来ますように』と書くほど、工房でのお仕事はSさんにとって張り合いになっています。
そんなある月曜日、朝の会が終了後、冴えない表情をしていました。先週からの腕の痛みは良くなっているようでしたが、パン工房のお仕事をどうするか躊躇していました。体調がすぐれないのであれば工房のお仕事をお休みすることをすすめましたが、その話にも冴えない表情でした。きっと仕事をしたい気持ちがあるけれど、あと一歩気持ちが向かないそんな様子でした。
「Sさん、今日は無理をしないでできることをしたら良いですよ。」「お客様が来たら挨拶をするだけでも工房でのお仕事ですよ」と伝えると、思い切りが付いたようで「やる!」と元気に答えてくれました。少し心配でしたが、終えられて戻ってくると「お客さん、三人来たよ!」と晴れやかな声が聞かれました。
年齢や持病やらバックグラウンドの整えを一番に考え、その上でお客さんとの関わりができたらと思うところです。ともあれ生活の張りを持っていることの強みです。無理せず、今のペースを大事にしてゆきましょうね。
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家族会に40本のエピソードがまとめられました
こんな出会いがあった、こんなやり取りができた、こうしたエピソードから相手をよりよく知り、楽しさを、芽生えを、好意的な持ち味や人柄を、また生き辛さの新たな解釈につながる気づきもありました。この気づきを楽しみに見守ることで、その人を支える根っことなっていくのでしょう。
エピソードの土壌には実践の視点が大事になってきます。青い鳥では“あいうえおの実践”をし、本人の気持ちを大事にすることが本人の主体性を尊重することにつながると考えています。
・あ-あいさつ 気持ちの良い出会いと別れ、次の出会いに繋がる
・い-いたわり 失敗など上手くいかなくても気持ちを支える
・う-うなずき 関心をもっている、どんなことでも受け止める
・え-えがお 共に喜ぶ、楽しむ、安心感を与える
・お-おうえん 一緒に取り組む、元気になる雰囲気など勇気づける
相手を支える根っことしての「あいうえお」の実践は、心を「軽く」してあげることにつながるのだと感じています。常識的なことですが、すぐにでも支援に取り入れることができます。障害の方と出会う場で、是非、活用して頂ければと思います。