バードウォッチング No.111 でこぼこみち⑦

笠原 駒子

☆息子と初めての外出

 息子が生まれてからしばらくの間、私は、なかなか外出することができませんでした。生まれたばかりの赤ちゃんが感染症にかかるのが怖かったのです。買い物は、食料品を含め、すべてネットで購入していました。息子を抱っこして当時住んでいたアパートの庭で日向ぼっこするくらいのことはしていましたが、初めて外出したのは、生後2か月半のときです。歩いて5分くらいのスーパーマーケットに行ったのが、息子の生まれて初めての外出でした。

 その日は、元夫の誕生日でした。ケーキ屋さんまで行く勇気がでなかったけれど、せめて、と思って、元夫が大好きだったレディーボーデンのチョコレートアイス(大サイズ)を買いました。元夫は、そのことを覚えているでしょうか。息子の生まれて初めての外出は、父親の誕生日プレゼントを買いにスーパーマーケットにいくことだったと、元夫が覚えているといいなと思います。

☆不安をも肯定する不思議な存在

 私が仕事に復帰するまでの約半年間、とてもしあわせな日々だったなぁ、と思います。あまり眠らずよく泣く子で、笑顔が少なく、なかなか目が合わず、まるで「お母さんじゃない」と言われているような気がして、悲しくなることもありました。生まれてからの約1か月を病院で過ごし、会えるのは1日のうち数時間だったから、私のことを母と認識できていないのかな。そんなことを考えたりもしました。でも、我が子は当然愛おしくてかわいくてたまらず、振り返ると、人生の中であんなに特別な時間は他にはなかったな、と思います。

☆息子への注ぎ込み

夕方、少し涼しくなるころに、息子を抱っこして多摩川沿いをよく散歩しました。不機嫌なことが多い息子でしたが、散歩しているときは穏やかでした。

「あ、電車がくるよ。中央線だね! あずさだね!」

「葉っぱが元気だね~」

「こっちの葉っぱも元気だね~」

そんなことを息子に話しかけながら歩きました。電車のことと葉っぱのことばかり話していたからか、息子の初語は「はっぱ」でした。続いて、ちゅーおーせん、あずさ。かーちゃ(母ちゃん)は4番目でした(笑)

★人との関係は不思議なもの、ご縁のものですから大事にしながら、それでいて縛られず、でありたいもの。互いに良くも悪くも影響しあう間柄は、否定することでもなく、無視することでもなく、見つめ合うものでもなく、その折々の自分を承知することなのでしょうか。

 さて、母子のつながりはなによりも不思議なご縁として生まれてくると言えそうです。生まれ方も、見た目も、節目のつながりも、二人ならではの雰囲気を醸し出しているものなのでしょう。母親の幸せ感はおのずと子の安心感に、子の不安感や不快感は母親の心配に直結するものです。そんな濃密な関係の頃合いのことです。初語は「はっぱ」、おかしな楽しさです。