バード・ウォッチングNO.54 「私の受け止め方」

R1.11.26 主任 土屋紗織

エピソードは生身の1回限りのものですから、下手をすると通り過ぎてしまいます。また思いがけない展開の一コマですから、普段使いの思いの中に“何が言いたいのだろ?”との関心を持っていることで私の心に留まるものがあるようです。

「そばにいることで」

  • 本当の気持ちは??

 日中活動では控え目で、発言も少ないAさん。心の面で何か抱えている時は態度にとても表れます。何かを求めてくるようにチラっとこちら見てきたり、今度はジーっと見つめてきたりと。何かあるのかと思い話しかけると、フンっとそっぽを向くのです。アメとムチではないですがこちらとしては、エー!と心の中で叫んでいます。

  • なにかは分からないけど、感じるから

何かあるけれどそれをどんな風に伝えたらよいのか難しいのでは?だけど気付いてほしい、さびしい気持ちを伝えたい、そんな風に感じられるのです。そんな時、そっとそばにいる。一緒に折り紙をする。塗り絵をしていたら、色鉛筆を削ってあげる。些細な事ですがAさんのこと見ているよというメッセージを送っています。その後、少し時間をおいて様子をみるとニコニコしているのです。お話することも大事なアプローチですが、ただそばにいるという事だけでも“あなたが大事”を注ぐきっかけになることをAさんを通して感じました。


 Bさんの自己紹介の場面に何度か立ち会っていますが、今回は思いもかけない心情が湧きおこりました。Bさんがこのような自己紹介するのは、両親への想いやお兄さんへの思い出が蘇ってくるからかもしれない、肉親の情がこの自己紹介を生み出しているのだ、と感じたところでした。このように受け止めるとBさんの淋しさと共に家族の思い出の強さも感じずにはいられませんでした。

「私の伝えたいこと」

  • いつもの自己紹介だけど

 実習の方を受け入れる際に、みんなで自己紹介タイムを設けています。そこでBさんの番がくると、「B千登勢といいます。千に登る勢いと書いて千登勢といいます。よろしくお願いします。」と必ず決まりごとのように話されています。実習の方からの良い名前ですねの言葉に満面の笑みで答えられています。そしてもう一つ「兄弟はいますか?私には亡くなってしまったけど兄がいます」と。

  • 両親の思い出に支えられているから

 ご両親がつけてくれた名前やお兄様のことを話されるBさん。淡々と話されているようですが、私にはなんだか寂しい気持ちを抱えているBさんを感じてしまうのです。ご家族を亡くした寂しさを抱えているけど、素敵な名前をつけてくれたご両親やお兄様との良い思い出は心の中にずっと生き続けている、私の支えになっているんだと、この自己紹介で伝えたいのかなと思います。これからBさんの支えの一部になれるよう、いつでもBさんの事を見守っていますね。