バード・ウォチングNO44 幸せを応援するために―ある父子の出会いから

30.1.30 理事 村瀬

 親亡き後を考える機会に同席した。障害年金2級で生活できる暮らしを考えていること、特にGH利用者・家族の協力を得て経済的にも関係的にも生活が成り立つこと、法人の社会的責任として先々のことも考えていることを伝える場となった。現実的に周りの方々の協力のもとに生活している日々を承知するだけにご了解、ご協力のお願いに率直に応じてくださった。

  • 家族の思いに触れて

 きょうだいが集まる前に、GH利用者の皆さんから「コーヒーが好きだから…」仲間も「それがいいね」と出会いを期待して、もてなす心遣いが生まれていた。また出会った折り「元気だった?奥さんは?」と大人としての振舞う姿をうれしく感じた。

 父子家庭となり娘をGHに託している父親、感情を抑えながら「私が倒れたらと心配で、切なくて…」と胸を突く言葉を吐かれた。また10年余前に 両親を亡くしGH暮らしを続けている50代の方の「お祖父ちゃんが建てて、お父さんが大きくした私の家はどうなるの?」「私の家に住みたいよ」との本音に触れて「その気持ち、よく分かる」と。

 加えて、姉の立場の方から「その気持ちを大事にしなければ。人の気持ちはそう簡単に切り替わるものではないから、両親が残してくれた家をなくしちゃだめだ。育った家が拠りどころだから」と。さらに弟の立場から、こまごまとして生活の1つ1つの確認をいただき、離れているからこそ、同胞だからこその気配りを感じさせられた。

  • 別れ方に生き辛さを知る

 少し長丁場の会合が終わり、件の父親はそそくさと帰り支度をされる。一瞬、違和感があったが、彼女が目に入り、即合点した。涙である。父親としては、なんとも仕様のない別れであり、娘の気持ちが分かるからこその苦しい事態だ。障害の重い彼女でも、父親に求めきれないことが身をもって分かり、悲しさを世話人に抱き着くことでやり過ごす。

 父親の苦しさ、彼女の淋しさ、いつもいる世話人に慰められて立ち直り、父親たちの使った湯呑を拭き片付ける彼女、思うに任せない人生の一場面でもあった。

  • 考えさせられたことは

 GHの担うものの大きさである。確かに「リフレッシュ」することで社会的責任を果たせる。今日の疲れを癒し、明日、元気に過ごすエネルギーを充てんすることで、日々の生活が回っていくのだから。さらに、思うに任せないことがあっても、昨日今日明日の生活を維持する意義は、この慰めの繰り返しの中で彼女らの人生を応援することである。必ずや、よりよい暮らしと云うように、変わっていく幸せの姿を求める道行を応援することになる、と改めて願う。

 そのために自分らしくリラックスできる場、時間が提供されることを前提に、その上で共同生活としての折り合い、助け合い、役に立つ自分、仲間のいる楽しさを通じて‟自分のことが好き”との自己肯定感を高めることにつながる日々であることが大事だ。

 新たな年にどんなエピソードが生まれるか期待している。