バード・ウォッチングNO.62 日々のエピソードから

R2.4.8 GH青い鳥 所長 井上

 直近のエピソードを紹介します。私たちは現場で日々の生活に直接触れ合います。いろいろ自らの支援のあり方や日々の下地を考える機会となっていることを感じました。

  •  「寂しかったんだよ!」

「なんでだよ!」とでも言いたいのでしょう、その日のAさんの様子はイライラが募り、私が『さくら』にお邪魔していることすら面白くないという感じでした。その日の連絡会で日中担当の職員がお休みになっていたことが頭をよぎりました。「〇〇さんがいなくてびっくりしたね。また明日来るよ。」と。そんなことを口にしたところ気持ちに届く一瞬があったのですが、またイライラ状態になりました。

 職員も人ですからお休みもあるでしょう。ですが、理屈はそうであってもそのことを理解するのは難しい、Aさんにとっては「なんだかよくわからない、なんでいないんだ」と感じる訳です。おそらく日中職員は前日の帰り頃に休みであること、代行の職員が来ますと話しているはずです。そして、当日は代行の職員や上田にいる職員と過ごしていましたが…。

彼は、自分の立場で快・不快の感性で周りの状況をとらえる認識の仕方ですから、あれこれ言われても了解するのは難しいのでしょう。感性的な存在なのですから、職員が気持ちを汲んであげることはできるはずです。「いなくて寂しかったね、ごめんね。怒っちゃうよね。」と感性に働きかける言葉かけが受け止めやすいのでしょう。「お休みは仕方ないでしょ。」と怒っていることを諫めてどうにかしようとすれば、それは彼の理解できないことを衝いてしまうことになり、立つ瀬が無くなります。私とのやり取りで一瞬ですがハッとしてくれたことにほんの少しですが彼の気持ちを代弁できただろうと手ごたえを感じつつ、やはりここが大事だと感じました。感情の凸凹があるのは普通のこと。状況に合わせながらなんとか受け止め慰めながらやり過ごしていくことで少しずつ支えられる関係になってゆくのだろうと思っています。

  • 「自信あります!」

 令和2年度の入所式になるはずだった4月3日は、主役である新人の体調不良で延期に。コロナの関係で予定が狂いに狂ったのでメンバーも少々元気がない。そこで急遽お楽しみ会になりました。

最初は景気の良い職員が大いに盛り上げ、4つ目くらいの出し物に『ひげダンスのテーマ』をバックにおもちゃの刀に向けて輪投げの輪を投げるパフォーマンスをしました。職員がデモンストレーションを数回やった後、メンバーに「やりたい人?」と誘いました。普段なら勢い良くCさんが声を出し手を挙げ、Dさんが『いざ!』という感じで手を挙げますが…。

ところが、今回はBさんが笑顔で自信ありげに手を挙げ、前に乗り出してくるではないですか。普段は耳に手を当て喧騒を少し避けるようにしているので、どちらかというと苦手なイベントと思っていたのですが耳慣れしてイメージが出来上がっていたのでしょう、タイミング良く声をかけられると皆からのBさんコールで気持ちも乗った風で『自分は得意!できるよ!』と言わんばかりです。きれいに弧を描いて輪投げが成功し、メンバーからは拍手喝采。誇らしげに席に戻っていきました。

 体験的に獲得していく方たちです。すぐにとはいきませんが繰り返し繰り返し、しかも楽しさの中、ここ何年かで仲間と一緒にイベントを経てきて、馴染み、楽しく参加できるようになり自信になってきたのだと思います。時間をかけ、探りながら巻き込みながら関わってきたことの下地が表に出た気がしました。次回も『ひげダンスのテーマ』を定番として“待ってました!”の期待感の場を設けたいと思います。

 

日々の出会い、一日一日の出来事は他愛もないことの連続ですが、意図した出会いがいつの間にか意味を持つ関わりになっていたことを感じさせてくれます。