バードウォッチングNo.96

日野青い鳥福祉会
理事 村瀬

 法人のエピソード24集が発行されました。44名の日頃の暮らしぶりが語られています。リード文をご紹介します。

☆エピソードは全体像

 多方向に渡るエピソードが語られる方、独自の領域に繰り返し焦点を当てている方、それぞれで良いのだと思います。〈なるほど、これがAさんだ〉と素直にうなづけるからです。エピソードは、その方の全体像を語っていることになります。

 全体像とは〈こんな凸凹があって、この力を、こんな風に発揮して、こんな暮らしをしている〉と捉える視点です。生活支援は関係を大事にする立場ですから、自分の力の活かし方には、これまでの人間関係が反映していると受けとめます。

 生きづらさの要因には、障害そのもの、環境、人間関係などが複合的に作用しているのが現実ですから、その上塗りをしないためにもこれまでの歩みの概略を承知して臨みたいと思います。

☆見る―見られる関係

 さて、生活の原点は「見る―見られる」関係にあります。私がAさんをどう見るか、プラス面に着目してみるか、マイナス面に囚われてみるか、プラスに見られたらAさんは安心感をもって出会えるでしょう。一方、マイナスに見られたAさんは不安と緊張に縮こまる傾向にあるでしょう。私の見方がAさんの心情に影響すると捉えます。ですから、支援側の人間観、障害観が問われるのです。

 また、課題行動に出会ったとき、行動に着目するとAさんの問題と捉えがちになり、行動修正が表に出てきます。他方、心情に着目すると私との関係に思いが及ぶ視点が生まれます。どう配慮ができたか、不安をどう受けとめられたか、私の関わり方の工夫に力点が置かれます。

☆明日のエネルギーを出すために

 エピソードをまとめる作業は、Aさんの直近の暮らしを振り返ることです。そのまま自分の関わり方の見直しと重なります。正直、上手くできたと感じることもありますが、多くはズレていたり、思いもかけないことが間々生じます。しかし、自分の未熟さを振り返りつつも、一緒に関わることの楽しさに焦点を当てたまとめをする方向でいます。

 「関係」を軸にするとは、「楽しくあれば、また明日もお互いに気持ちよく出会える」と受けとめることです。実務としては、振り返りの反省、アドバイスを受けて、工夫をして臨むことを基本とします。